支援を呼びかける宮司の植松有麻呂さん=三重県松阪市殿町の本居宣長ノ宮で2024年5月15日午後2時30分、原諒馬撮影
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 江戸時代の国学の大家、本居宣長をまつる神社「本居宣長ノ宮」(三重県松阪市殿町)が、後継者難や資金不足を理由に廃止の危機に直面している。宮司の植松有麻呂さん(87)は「老朽化した神社の修繕や改修を行い、維持したい」と費用をクラウドファンディング(CF)で募り始めた。

 本居宣長ノ宮は1875年、宣長が眠る松阪市山室町の「奥墓(おくつき)」の南側に建立された「山室山神社」が前身。1915年に現在地に移転し、95年に今の名前に改名した。公益財団法人が運営する「本居宣長記念館」(松阪市殿町)に隣接しており、全国から歴史好きの観光客らが訪れる松阪市の観光スポットの一つになっている。

老朽化が目立つ参道の階段=三重県松阪市殿町の本居宣長ノ宮で2024年5月15日午後2時27分、原諒馬撮影
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 しかし、建物は雨漏りが目立ち、参道の石の階段は複数箇所が欠けている。階段は近隣の中学校の運動部が練習でよく使っており、植松さんは「生徒がけがをしないか心配している。何とかしたい」と危惧する。

 自前で何とかしたいところだが「自費で全ての修繕を行うのが難しい」(植松さん)のが現状。約30年前に神社本庁を脱退した同宮は収益源を確保するために結婚式事業を展開した。だが、専門の結婚式場での披露宴が主流になるにつれて苦境に立たされた。

 そこで考えたのがCFの活用だった。神社などによると、CFにはさい銭感覚で参加できる3000円のコースから、植松さん自ら返礼品として宣長の和歌を書く御朱印コース5000円、巫女(みこ)・神職体験コース1万円――などがある。集まった資金は主に境内の建物や階段の修繕工事に使うという。

 植松さんは「本居宣長さんをまつる神社の存続のために、協力をしていただきたい」と呼びかけている。

 CFは8月15日まで募集。詳しくは本居宣長ノ宮再興プロジェクトのサイト(https://ubgoe.com/projects/724)で紹介している。【原諒馬】

進む宗教離れ、破産のケースも

 全国には約8万の神社があるとされるが、存続の危機にひんしているのは本居宣長ノ宮だけではない。2012年には、創建400年で本殿が重要文化財に指定されている青森県弘前市の東照宮が約2億円の負債を抱えて破産したケースもある。

 藤本頼生・国学院大教授(宗教社会学)は「他の宗教も含めて宗教離れが進んでいるとみられ、寺社側も近年の社会状況を考えた上で運営していく必要がある」と指摘する。

 その上で本居宣長ノ宮を残す意義について藤本教授は「神社は地域の結びつきを強めることができる存在。本居宣長をまつる神社が無くなるのは松阪にとっても大きな損失になるのではないか」と危機感をあらわにした。

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