東京電力福島第1原発事故に伴い、避難した福島県民ら約1800人が国と東電に原状回復や慰謝料を求めている福島訴訟(生業=なりわい=訴訟)第2陣で、福島地裁の小川理佳裁判長らが31日、除染で出た廃棄物などを保管している大熊町の中間貯蔵施設などを訪れ、原告が事故前に暮らしていた現地を視察した。
大熊町の中間貯蔵施設では、近くに自宅があった原告の60代男性が裁判官を案内した。事故前の生活について、男性は「地域の人たちや親戚に助けてもらいながら子育てをした思い出の家だった」と振り返った。自宅の庭には果物の木などを植え、季節ごとに楽しんでいたという。だが、原発事故により、住み慣れた古里の生活は失われた。
自宅は昨年末に取り壊された。「一生ここに住むと思っていたので、家の跡地を見るととても苦しい」と胸の内を明かした。一族の墓も近くにあるが、遺骨はまだ持ち出せていない。放射線にさらされた遺骨を他の場所へ移すと、差別や陰口の対象になるかもしれないという不安が拭えないためだ。
裁判官への案内を終えた男性は「原発事故で生活の全てが奪われてしまった。国には一言『申し訳なかった』と謝罪してもらいたい」と話した。
このほか、裁判官らは川俣町山木屋や伊達市月舘町、福島市大波の原告らの自宅跡地などを視察した。【松本ゆう雅】
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