子育てをするカラス=杉田昭栄さん提供

 カラスに威嚇されたり、攻撃されたりするケースが後を絶たない。ヒナが巣立ちを迎える今の時期、特に注意が必要だという。

 5月下旬、記者が千葉市美浜区内の歩道橋を歩いていると、飛来してきたカラスが欄干にとまり、「ガーガー」と繰り返し、威嚇するように鳴いた。距離は1メートルもなく、恐怖を感じて、その場から走り去った。

 四半世紀の研究から、「カラス博士」とも呼ばれる宇都宮大学名誉教授の杉田昭栄さん(71)=動物形態学=は「近くにヒナがいる巣があったのでは」と推測する。

 通常、カラスは3~4月に3~4個の卵を産む。生まれたヒナは6月にかけて巣立つため、繁殖期の中でも、特にヒナを守ろうとする親鳥の警戒心が強くなる時期だ。

 2023年、東京都に寄せられたカラスに関する苦情・相談は302件で、5~6月には威嚇された、襲われたとの内容もあった。

 杉田さんによると、人を襲うのは比較的、ハシブトガラスが多いという。太いくちばしが特徴で、先の方に向けて大きく湾曲している。

巣立ち前の親子が同居するカラスの巣。ヒナは成長し、親鳥と見分けがつきにくくなっている=杉田昭栄さん提供

 元々、森林で生活していたが、都市部でも生息するようになり、街路樹の上や看板の裏など、人が気づきにくい場所に巣を作りやすい。

 オスとメスが交代でエサを運び、必ずどちらかが巣を見張る。親鳥が危険を察知すると人への攻撃や威嚇を始める。ただ親鳥の判断基準は不明で「巣に近付いても、威嚇、攻撃をされない人もいる」という。

 では、どう対処すればいいのか。杉田さんは「カラスの特徴を知ることで被害を防げる」と話す。

 公園など、大きな樹木が密集している場所には必然的に巣が集中する。巣に近付かないよう、こういった場所は避けたほうがいい。

 カラスは人を攻撃する前、「カッカッ」と短い間隔で鳴き、近くに木があれば枝を突っついたり枝を折ったりする。これに気付いたら、その場を離れることが重要だ。

 それでも、襲われそうになった場合は、カラスに狙いを定められないよう、後頭部を隠すように傘をさすことが効果的という。

 杉田さんは、飛び立てずに巣から落ちてしまったヒナを見つけた際、「危険なので、決して近付かないでほしい」と呼び掛ける。

 「人がヒナを助けようと思った行動でも、親鳥はヒナを危険にさらす行動とみなして、攻撃してきます」

 巣から落ちたとしても、親鳥は、茂みや木の根元に隠れながら、エサを与えてヒナを育てているという。

 杉田さんは「親が子を守る行動で、カラスが攻撃的になるのはこの時期だけ。気をつけて見守ってほしい」と理解を求める。【平塚雄太】

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