日本テレビが昨年秋に放送した連続ドラマ「セクシー田中さん」の原作者で漫画家、芦原妃名子(ひなこ)さんが急死した問題を巡り、同局は5月31日、外部弁護士も入った社内特別調査チームによる調査報告書を公表した。芦原さんは1月末に亡くなる前にネットで脚本を巡って日テレ側と食い違いがあったことなどを投稿。報告書は、その主な原因として、芦原さんの要望が、ドラマ化許諾の条件に当たる強い要求として、制作サイドには伝わっていないなどコミュニケーション不足があり、信頼関係が失われていったとした。
制作サイドが(芦原さんが抱いた)ドラマ脚本家へのネガティブな印象を拭えず、「制作サイドへの不信が脚本家個人にも向けられることになった」とも記した。
31日に日本テレビで行われた報告書の説明会には、石沢顕社長が冒頭出席し、「ドラマの制作関係者や視聴者を不安な気持ちにさせてしまったことに、おわび申し上げる」と謝罪。ドラマ制作に関係者が安心して臨めるように、責任を持って取り組むと話した。
報告書では、制作期間が結果的に不十分だった可能性も指摘。このドラマの制作期間は初回放送まで半年程度で、再発防止策として、放送開始の1年半前、遅くても1年前には企画決定すべきだとした。
局側が、原作者と脚本家との間で可能な限り早期に契約を締結することや、原作者との認識の食い違いをなくすため、制作担当者が原作者との直接の面談を要請することなども、再発防止策として盛り込んだ。
「セクシー田中さん」は、小学館の漫画誌で連載中だった同名漫画(芦原さんの死後に終了)が原作。地味な会社員の女性が夜になると一変し、ベリーダンスで自己を解放するという物語。日本テレビが連続ドラマ化し、昨年10~12月に全10話が放送された。
ドラマの終盤の脚本は、芦原さんが自ら執筆していた。最終回が放送された12月24日、脚本家がSNS(ネット交流サービス)で、これに困惑しながら協力したと打ち明けた。
一方で、芦原さんも今年1月26日にSNSで、ドラマ化の際に「必ず漫画に忠実に」制作し、そうでない場合は加筆修正するといった条件を日テレ側に伝えていたなどの経緯を投稿。脚本家やドラマの制作スタッフと直接意思疎通する機会がなかったことや、原作を大きく改変した脚本の提示が続き、修正のために疲弊していったことなども記した。
ネット上では日テレや脚本家への批判が高まり、芦原さんはSNSに「攻撃したかったわけじゃなくて。ごめんなさい」と投稿。その翌日、遺体が栃木県内で見つかった。現場の状況から自殺とみられている。【井上知大】
著作者人格権
漫画原作者など著作者は、著作権法により、財産的利益を守る著作権(財産権)の他、著作者人格権を持つ。著作者人格権には他人が作品内容を勝手に改変することを禁じる「同一性保持権」などがあり、ドラマ「セクシー田中さん」の原作漫画家の死を機に、その在り方が議論になっている。著作者人格権には、作品内容と深く関わる著作者の人格を守る目的があり、著作権と違って他人に譲渡できない。「セクシー田中さん」の漫画版元の小学館が2月に発表したコメントも、著者の「絶対的な権利」で尊重されるべきだと記した。
相談窓口
・#いのちSOS
「生きることに疲れた」などの思いを専門の相談員が受け止め、一緒に支援策を考えます。
0120・061・338=フリーダイヤル。月・木、金曜は24時間。火・水・土・日曜は午前6時~翌午前0時
・いのちの電話
さまざまな困難に直面し、自殺を考えている人のための相談窓口です。研修を受けたボランティアが対応します。
0570・783・556=ナビダイヤル。午前10時~午後10時。
0120・783・556=フリーダイヤル。午後4時~同9時。毎月10日は午前8時~11日午前8時、IP電話は03-6634-7830(有料)まで。
・まもろうよ こころ(https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/sns/)
さまざまな悩みについて、LINEやチャットで相談を受けている団体を紹介する厚生労働省のサイトです。年齢や性別を問わず、自分に合った団体を探せます。
・こころの悩みSOS(https://mainichi.jp/shakai/sos/)
悩みを抱えた当事者や支援者への情報のほか、相談機関を紹介した毎日新聞の特設ページです。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。