見渡す限り一面を覆いつくすイワシの群れ。ここ数年、北海道では、各地の海岸で見られるようになりました。その一方で、この10年で8割も減っているのが甘エビです。名産の町は頭を抱えているほどの状況です。大量のイワシとの関連は…。
■イワシの大群がエビかご漁を直撃
北海道留萌市の港には多くの釣り人がいました。ただ、これはもはや“釣り”ではないそうです。
男性
「(Q.一気に2匹釣れた?)釣れたというか、ひっかけた。エサ付けてないもん」
エサいらずの異様な光景。大群となっていたのはイワシでした。この現象があるものに深刻な影響を与えています。
エビかご漁 柏崎正勝さん(53)
「きょう全然だめ。1箱3キロ入っているんです。(いつもは)100箱以上だけど、1箱3キロしかない状態。全然話にならない」
35年以上、エビかご漁に携わってきた柏崎さん。2年ほど前から異変には気付いていたといいます。
エビ漁に出るたびに、とれ高が良い場所などのデータを記してきたノート。著しく不漁だった日、書いてあったのは「イワシ」の文字です。
海底に沈めたカゴにタラなどのエサを付けておびき寄せる、エビかご漁。しかし、死んだイワシが海底に沈み、エビはカゴの外のイワシを食べるため、全く引っかからないのだといいます。
エビかご漁 柏崎正勝さん
「(イワシを)エビが食べている」
4カ所に500個ずつ合わせて2000個も仕掛けて、いつもなら300キロほどのエビが取れますが、この日は全部で10キロほどでした。
エビかご漁 柏崎正勝さん
「こう不漁が続けば(漁に)出るだけ赤字になる。休まなきゃならない」
■不漁に頭抱える“元日本一の町”
当然、地域の飲食店も影響は及びます。
新家寿司 田岸義章専務
「2週間前に入ったこれが最後(活甘エビは)完全にラスト1です」
ゴールデンウイークを前に、こうした商品は道内外を問わず需要が増えるといいます。
新家寿司 田岸義章専務
「無理を言って何とかと頭を下げて、分けていただいているという状況。お吸い物もエビの殻を長時間煮出してだしを取っているので、なにしろエビがないと商売にならない」
影響は他でも。かつては甘エビの漁獲量が日本一だった羽幌町。今は水揚げ量が減り、売り上げは10年前の約4分の1にまで落ち込んでいます。
北るもい漁業協同組合 金丸巧さん
「甘エビを取っていた船は、ここ数年で大型船も2つあったが、2つとも廃業してやめてしまって。一昔前までは日本一とうたっていたが、今はもう日本一とは言えなくなってしまっている」
毎年約2万人が訪れるという恒例の『はぼろ甘エビまつり』は、今年も中止が決定しています。
■不漁の原因「いつもと違う年」
イワシが海底で死んでいる理由について、中央水産試験場の山口研究主幹はこう話します。
道立総合研究機構中央水産試験場 山口浩志研究主幹
「今年は2月の方が(海水温が)高めで、3月の方が低くなっている。いつもと違うような年だった」
ただ、要因などについては未解明な部分も多く、引き続き調査を続けていくとしています。
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