「一日も早い全面解決をお願いしたい」。旧優生保護法訴訟の最高裁弁論後に記者会見した原告の北三郎さん(81)=活動名=は判決に向けてそう訴えた。
被害者側が全面救済を強調するのは、最高裁が仮に除斥期間の適用を制限したとしても、その先の判断次第では救済対象から漏れる被害者が出る恐れがあるためだ。実際に適用を制限して国の責任を認めた4件の高裁判決も、救済範囲については異なる考えを示している。
大阪高裁判決(2022年2月)と札幌高裁判決(23年3月)は、提訴に必要な情報を得るのが困難な状況が解消されてから6カ月以内であれば賠償請求できるとした。ただ、18年には一連の訴訟が始まって関連の報道も増えており、現時点では6カ月が経過したとみなされる可能性がある。
これに対し、東京高裁判決(22年3月)は、被害者に謝罪の意を表明した19年4月の救済法施行から、少なくとも5年以内は請求可能とした。
さらに2件目の大阪高裁判決(23年3月)は、国か最高裁が旧法を違憲と認めた時から6カ月以内は請求可能と踏み込んだ。この判断を最高裁が採用すれば、今夏に予想される大法廷判決後の提訴も可能になるとみられる。
ただ、手術を受けた被害者は約2万5000人に上るとされるが、訴訟を起こしたのは39人(うち6人死亡)にとどまり、声を上げられない被害者は多い。被害者側からは画期的な判決を最高裁で勝ち取って、立法による解決につなげたいとする意見も出ている。【巽賢司、菅野蘭】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。