新年度が始まって会社などで健康診断を受けたという方も多いと思いますが、皆さんは診断の結果を正しく理解し役立てられているでしょうか。
■健康診断や人間ドックの受診状況
健康診断や人間ドックの受診状況です。 50代までは増えていきますが、50代をピークに減少傾向に転じます。70代、80代は、20代、30代よりも少ない割合です。
この記事の写真は16枚健康診断を受けていない人の声です。
30代女性「4年くらい受けていない。忙しくて行く余裕がない。受けていたころも、数字ばかりの紙を見ても理解できなかった」 70代男性
「退職後15年受けていない。健康には自分で気を使っている。本当にまずい時には病院行く」 大阪大学特任准教授 野口緑さん
「リスクが高まる中高年以上こそ健康診断を受けるべき。健康診断の結果から『血管の状態』を知ることが重要。脳卒中、心筋梗塞、認知症などの病気は、血管が傷んだ結果起こる」
健康診断では、脳卒中や心筋梗塞などにも関わる『血管の状態』を知ることもポイントの1つです。健康診断の結果、どこをどう見ればいいのでしょうか。
こちらは、33歳の男性・Aさんの健康診断の結果です。多くの項目があって、「数字ばかりの紙を見ても理解できない」という声もありました。では、『血管の状態』を知るためにどこに注目すればよいのでしょうか。
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■最新 健康診断の見方『血管の状態』知るには?■最新 健康診断の見方『血管の状態』知るには?
『血管の状態』は健康診断のどれか一つの項目ではなく、複数の項目を見ることで推測できます。『血管の状態』には4段階あります。自分の血管が今どの段階にあるか、健康診断で異常値が出た項目にチェックを入れてください。
最初の段階は『ダメージ小』、潜在的に進行する段階です。BMI、腹囲、中性脂肪、肝機能の値であるAST、ALT、γ-GTの数値が悪くなるとこの段階です。
次の段階は『ダメージ中』、血管が傷み始める段階です。血圧、血糖とHbA1c、LDLコレステロール、尿酸の数値が悪くなるとこの段階になります。
さらに『ダメージ大』、血管に深刻な変化が生じる段階です。腎機能の値である尿たんぱく、クレアチニン、eGFRや心電図、眼底検査で異常が出るとこの段階になります。この段階になっても放っておくと、健康障害が起こります。脳梗塞、脳出血など脳血管疾患や心筋梗塞、糖尿病の合併症、慢性腎不全などになる可能性があります。
先ほどのAさんの健康診断結果で見てみます。『注意』と書かれているのが、基準値を超えてしまった項目です。
『ダメージ小』は青く塗られた項目です。BMIの基準値18.5〜25のところをAさんは30.4、腹囲の基準値が男性85未満のところをAさんは101.5と超えています。肝機能の値であるALTとγ-GTも、基準値を超えています。
次に、『ダメージ中』は緑に塗られた項目です。最大血圧は1回目148、2回目136と、血圧の基準値である最大血圧130未満を超えています。LDLコレステロールは143で、基準値の120未満を超えています。尿酸は薬を服用しているため基準内に収まっています。
そして『ダメージ大』が赤に塗られた項目です。 心電図の検査結果が『完全右脚ブロック 陰性T波』という結果になっています。
先ほどのチェックポイントAさんの場合
●『ダメージ小』でBMI、腹囲、肝機能
●『ダメージ中』で血圧、LDLコレステロール
●『ダメージ大』で心電図にチェックが入ります。
「段階としては『ダメージ大』に進んでいる。BMIと腹囲の値から内臓脂肪がかなり溜まっていて、血管の炎症を引き起こす物質が増えていると考えられる。このまま放っておくと、将来心筋梗塞になる恐れがある」
では、改善するにはどうすればよいのでしょうか。
大阪大学特任准教授 野口緑さん「大本の『ダメージ小』の項目を改善することが大切。『ダメージ中』や『ダメージ大』のグループで異常値が出た項目の悪化の原因は、『ダメージ小』の項目にあることが多い。Aさんの場合は内臓脂肪を落としたほうがいい。糖質や脂質のとりすぎに注意し、バランスの良い食事をとることと、体を動かす必要がある」ということです。
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■経年変化チェックで突然死を防ぐ■経年変化チェックで突然死を防ぐ
大阪大学特任准教授の野口さんはかつて、市役所で健康管理の仕事をしていて『スーパー保健師』と呼ばれていました。その市役所では約4500人が勤務していましたが、60歳以下の現役世代の職員が多い年には20人近く亡くなることもありました。40〜50代の職員は生活習慣を見直せば予防可能な脳卒中や心筋梗塞などを発症していました。野口さんが、40〜50代の職員の過去の健康診断のデータを調査すると、病気に至る経緯が判明してその後の改善につながったということです。
働き盛りで倒れてしまったケースです。この市役所に勤務していたBさん、当時54歳・男性です。34歳で肥満、42歳で中性脂肪が高くなりました。44歳の時には高血圧など4項目が異常な値に。そして54歳で脳梗塞を発症しました。野口さんによるとBさんは44歳で『高血圧など4項目が異常値』になり、翌年も異常値は出たままだったので、45歳の時に怪しいと感じて対策をしていれば、脳梗塞を発症しなかった可能性があるということです。
もう1つのケースです。同じ市役所に勤務していたCさん当時57歳・男性です。37歳で肥満、40歳で高血圧と肝機能値の異常がみられ、45歳の時に中性脂肪も高くなりました。 その後、善玉コレステロールが低下して高血糖になり、57歳で心筋梗塞を発症しました。 野口さんによるとCさんの場合、40歳の時に肥満のほかに『高血圧』『肝機能値異常』が出て、翌年の41歳でも変わらず異常値が出ていたので、41歳で対策をしていれば、心筋梗塞を発症しなかった可能性があるということです。
大阪大学特任准教授 野口緑さん「わずかな異常でも重なり出すと血管障害が進む可能性が高い。血管障害の進行は、自覚症状がないのが最大の特徴。経年変化をチェックすることで対策方法が見えてくる」
肥満でなくても注意が必要です。Dさん当時56歳。女性でBMIは20.7。22が標準なので、肥満ではありません。
Dさんの生活です。週に2日以上ジムに通っていて、喫煙なし、お酒は1日1合未満と、生活習慣に問題はありません。しかし、DさんのLDLコレステロールを見ると、54歳の時は112でしたが、56歳の時に136と急上昇して、基準値の120を超えました。さらに進むと動脈硬化の恐れもあります。
運動をしているのになぜLDLコレステロールが上昇するのでしょうか。
大阪大学特任准教授 野口緑さん「運動習慣や肥満はLDLコレステロールの値には直接的な関係はない。50代女性で、急にLDLコレステロール値だけが上がった場合、女性ホルモンの分泌量減少の影響がある」
女性は閉経してLDLコレステロールが上がったら、コレステロールや飽和脂肪酸が多い食品を食べ過ぎないことが大事です。コレステロールが多い食品は、たらこ・かずのこなどの魚卵や白子、レバー、鶏卵などです。飽和脂肪酸が多い食品は、牛乳・バター・チーズ・ヨーグルトといった乳製品などです。LDLコレステロール値を下げるには、食物繊維の摂取も大切です。
男性に要注意な項目があります。
大阪大学特任准教授 野口緑さん「男性は尿酸に注意。高尿酸血症というと『痛風』が知られているが、血管の内皮細胞が炎症を起こし、血管障害が進む原因にもなる」
尿酸値は筋肉量が多いと高くなります。男性は女性に比べて筋肉量が多いため、尿酸値も高い傾向に。筋肉痛が起きるくらい激しい筋トレは要注意です。筋肉の細胞が壊れ、細胞の老廃物である尿酸が増加してしまうということです。負荷の少ない有酸素運動がおすすめで、アルコール・果糖のとりすぎはNGです。
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年5月24日放送分より)
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