外国人用の食品表示を考案した(左から)今屋日和さん、福井美佑さん、乾日菜代さん=橋本市古佐田2のファミリーマート橋本古佐田店で、藤原弘撮影

 「イスラム教で禁止されている豚肉の入ったサンドイッチを食べてしまった」「間違った物を買ってしまった」。日本で暮らす外国人のそんな声に応え、和歌山県立橋本高校の生徒3人が、英語やイラストで食品を説明する表示を考案した。橋本市内のコンビニエンスストアに取り付けたところ好評で、「SDGs探究AWARDS2023」(一般社団法人未来教育推進機構主催)で入賞を果たした。【藤原弘】

 3人は、乾日菜代さん、今屋日和さん、福井美佑さん。2年生だった昨年秋、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて取り組みを提言する「総合的な探究の時間」の一環で活動を始めた。手始めに同校のALT(外国語指導助手)のアメリカ人女性に困っていることを尋ねたところ、予想していた駅などの表示ではなく、買い物という回答だった。

 そこで、市内の専門学校に通うフィリピンやネパールなどの外国人に買い物で困ったことをアンケート調査。30人以上から回答が得られ、宗教で禁じられている食材を誤って食べたことや、買い物に時間がかかっているケースなど具体例が浮かび上がった。外国人の姿を多く見かける橋本駅近くの「ファミリーマート橋本古佐田店」(南雲信一店長)に協力してもらい、昨年11月からイラストや英語で食品を説明する表示を取り付けた。

イラスト付きの食品表示=橋本市古佐田2のファミリーマート橋本古佐田店で、藤原弘撮影

 例えばハムカツサンドの場合、「Ham cutlet」と英語で表記し、含まれている食材を示すためブタの絵を描いた。他には、おにぎりや鶏のイラストを付けた鶏肉の揚げ物など約100種類。今屋さんは「英語が分からない人もいたので、イラストを付けた」と説明し、福井さんは「普通の高校生でも困っている人をサポートできることが分かった」と話す。

 南雲店長は「高校生の発想は面白い。外国人から肉が入っているのかと尋ねられたが、今は表示で分かるから、外国人がよく買ってくれるようになった」と効果を実感している。

 今年2月ごろには外国人観光客が多い高野山(高野町)にも活動を広げ、食料品や土産物を販売する「勝間屋」(川俣大輝さん経営)で食品表示のポップも考案。棒状の「高野棒麩(ふ)」やビールの「天空般若」など5種類に表示されている。川俣さんは「食べ方が分からずに外国人が棒麩をかじって食べたという話も聞いたことがある。高校生が柔らかいイメージで商品の内容や食べ方を表現しており、外国人が商品を手に取って見てくれている」と話す。

 SDGs探究AWARDS2023には、全国から約750件の応募があり、3人の取り組みは最優秀賞や優秀賞、審査員特別賞に次ぐ協賛団体賞に選ばれた。乾さんは「壮大なテーマの地球温暖化などではなく、自分たちができることに取り組んだのが良かった」と喜んだ。

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