原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の選定に向けた文献調査を巡り、九州電力玄海原発が立地する佐賀県玄海町議会は15日、本会議を開き、町内3団体が出した調査受け入れを求める請願3件について、原子力対策特別委員会に審査を付託した。特別委は17日から審査を始める。最終処分場選定や建設業務を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)によると、原発立地自治体の議会に文献調査を求める請願が提出されたのは初めてとみられる。
文献調査は選定の最初の段階で2年程度を要し、調査実施で国から最大20億円が交付される。町議会事務局などによると、請願は町内11軒の旅館で構成する町旅館組合▽飲食業経営者19人による町飲食業組合▽建設業11社で組織する町防災対策協議会――が提出し、4日に受理された。
玄海原発は1、2号機が廃炉作業中、3号機が再稼働、4号機が定期検査中。請願で旅館組合は「放射性廃棄物の発生原因を有する自治体の責務として文献調査に応じることで国に協力すべきだ」と強調。飲食業組合は廃炉や新型コロナウイルス禍による売り上げ減を指摘し「最終処分場は新たな産業振興策の選択肢の一つ」とした。
政府が2017年7月に公表した処分場の適地を示す「科学的特性マップ」で、町の地下は石炭がある可能性から処分場に「好ましくない」と判断されており、脇山伸太郎町長は23年3月の町議会で「文献調査に手を挙げる考えは現時点ではない」と答弁していた。
NUMOによると、地下資源が存在しない範囲を確認できる可能性もあるため「好ましくない」とした地域でも文献調査はできる。
請願について脇山町長は「重く受け止める。議会での議論を見守りたい」とコメントした。
文献調査は現在、北海道寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村で進む一方、長崎県対馬市では、市議会が調査受け入れの請願を採択した後、市長が受け入れ拒否を表明した。今回の請願について、NUMOは「地層処分に関心を持っていただけることに深く感謝申し上げる」とのコメントを出した。【五十嵐隆浩、森永亨、池田真由香】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。