犯罪被害者のメディア対応について書かれたリーフレットを持つ酒井肇さん(右)、智恵さん夫妻=大阪市天王寺区で2024年5月、村田貴司撮影

 大阪教育大付属池田小乱入殺傷事件で長女麻希さん(当時7歳)を亡くした酒井肇さん(62)と智恵さん(63)が、犯罪被害者を対象に、メディアへの取材対応を助言し、報道の意義を伝えるリーフレットの作製を企画し、5月に完成させた。酒井さん夫妻は「なるべく早い段階で報道の意義や被害者が取材対応を主体的に選択できることを伝えたい」と話している。

 認定NPO法人「大阪被害者支援アドボカシーセンター」と共同で作製した。センターは大阪府公安委員会が指定する「犯罪被害者等早期援助団体」で、被害者の電話相談に応じたり裁判所への付き添い支援をしたりしている。酒井さん夫妻は2023年3月、センターにリーフレット作りを提案。センターによると、被害者からの働きかけでセンターが支援に乗り出すのは極めて異例という。

大阪教育大付属池田小に入学した時の酒井麻希さん=遺族提供

 リーフレットはA4判の両面印刷を三つ折りにしたもの。取材の申し入れに対して「受けるかどうかは自由」「時期を選べる」などと被害者が権利を主張できることを強調した。被害者の思いや要望を社会に届けられるといったメリットも記載している。

 酒井さん夫妻は、01年6月の事件直後に報道陣が自宅に押し寄せるメディアスクラム(集団的過熱取材)に苦しんだ一方で、報道による恩恵も感じたという。肇さんは「23年前の私たちは、メディアの目的が分からなかった。報道の意義や対応方法が一目で分かるリーフレットは、被害者にとって情報源になる」と期待を込めた。智恵さんは「取材に対し、被害者自身が主体的に選択できる権利があると伝えたい」と話した。

犯罪被害者のメディア対応について書かれたリーフレットを持つ酒井肇さん(左)、智恵さん夫妻=大阪市天王寺区で2024年5月、久保玲撮影

 リーフレットは、センターの支援員が被害者に対し、メディアへの対応方法を説明する際に使う。問い合わせはセンター事務局(06・6771・7600)。【中田敦子】

大阪教育大付属池田小乱入殺傷事件

 2001年6月8日午前10時過ぎ、大阪教育大付属池田小学校(大阪府池田市)に当時37歳の宅間守元死刑囚=04年9月執行=が乱入し、包丁で児童らを次々に襲った。1年生の男児1人と2年生の女児7人が死亡し、児童13人と教員2人が重軽傷を負った。

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