今年から5月開催になった福島県・相馬地方の伝統行事「相馬野馬追(のまおい)」は27日、南相馬市小高区の相馬小高神社で、捕らえた馬を神前に奉納する「野馬懸(のまかけ)」を行い、3日間の行事を終えた。2カ月前倒しの開催で熱中症になる人馬は減り、観客数は増加。関係者は「初夏の風物詩」としての定着に手応えを感じていた。
野馬懸は野馬追の原形を最もとどめた行事で、国の重要無形民俗文化財の指定を受ける重要な材料となった。
近くの市立おだか認定こども園は、初めて園児たちと歩いて見学に来た。小高区では、東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示が2016年に解除され、同園はその4年後の20年に開園。子ども人口の激減した区内唯一の保育施設で、これまでの7月開催は暑くて見学が難しかった。園児約30人が本部席のテント下で見物し、「がんばれー」と馬を捕らえる御小人(おこびと)や騎馬武者に声援を送った。
本祭りのあった2日目の最高気温は26・0度で昨年より9度低く、人馬の負担軽減は明らかだった。市が1~2日目に原町、鹿島両区で救護した熱中症(前兆含む)の出場者や観客は18人で、昨年の80人から激減。昨年111件に及んだ馬の日射病は確認中だが、明らかな重症はゼロだという。呼び物行事の甲冑(かっちゅう)競馬には昨年の1・5倍の51騎が出走した。26日の祭場地と沿道の観光客は計約7万3000人で、昨年より1割増えた。
小高郷騎馬会長の松本充弘さん(77)は一連の行事を終え、「人馬にも観客にも素晴らしい環境で、未来に野馬追を残していけると確信した」とホッとした様子。昨年は自身も熱中症になり担架で運ばれたが、今年は小高郷の人馬とも熱中症はゼロだったという。
日程変更に伴い予定の調整や準備に苦労した関係者もいたことを念頭に、松本さんは「全員がより良い環境になるよう、皆で一緒に考えていきたい。これを機にもっと多くの人に見に来てもらえるよう情報発信などに努めたい」と話した。【尾崎修二】
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