カメの甲羅のような小さくて硬い体から、強烈な悪臭を放つ――。そんな迷惑なカメムシが各地で大量発生している。果物などの農作物への被害を警戒し、「注意報」を出した自治体は2024年は30都府県に上り、5月末時点では過去10年で最多。大量発生の原因は、前年のスギやヒノキの花粉飛散と関係があると専門家はみている。
今回大量に発生しているのは、チャバネアオカメムシ、ツヤアオカメムシ、クサギカメムシなど。いずれも「果樹カメムシ類」の仲間で、リンゴやナシ、モモなどの果汁を吸う。吸われた実は表面がでこぼこになるなどして商品価値が失われる。
このため、農林水産省は都道府県と協力し、発生状況を「病害虫発生予察情報」として発表している。24年は3月22日の愛媛県を皮切りに、5月23日までに福岡県、大阪府、埼玉県、富山県など30都府県で注意報を発令した。5月末までで比較すると直近10年間では18年の15府県を抜いて最も多い。
現時点ではいずれも警報には至っていないが、適切な薬剤散布や果実への袋がけなどの防除措置を農家に呼び掛けている。
カメムシはどこから来るのか?
虫害研究に携わる農研機構植物防疫研究部門の新井朋徳さんによると、日本に生息するカメムシは1000種類以上。果樹カメムシ類は森林を拠点とし、スギやヒノキの実を好むという。
23年は花粉の飛散量が多く、実が豊作だったため、カメムシの個体が増えたと考えられる。さらに暖冬のため多くが越冬し、春になってエサを求めて果樹園に飛来したのではないか――。そう分析する新井さんは「空腹なのか、果物を手当たり次第に食べるのが農家にとっては問題です」と渋い表情だ。
カメムシは日没からの数時間に活発に動く習性も持っている。市街地で姿が見られるのは、街の明かりに誘われて、と考えられるという。
被害は住宅地の家庭菜園にも広がり、照明のある家屋にも入ってくる。手で除去しようとすれば悪臭を放つのでやっかいだ。防虫剤メーカーのフマキラー(東京都千代田区)によると、家庭用のカメムシ対策剤の需要が高まっており、24年は市場全体で前年の約130%の売り上げで推移しているという。
フマキラーは生活情報サイト「For your LIFE」でカメムシ被害を予防する暮らしのアイデアを紹介している。
カメムシはハーブのミントが苦手といい、ミントの苗を植えると、家庭菜園への被害を少なくすることが期待できるという。
家の中に入れないためには、洗濯物を取り込む際にくっついていないかチェックする。網戸や窓ガラスに忌避剤を噴霧するのもおすすめという。
家の中で見つけた場合は、刺激を与えず素早く駆除するのが肝心だ。粘着テープで捕らえて、においを発する前に丸めて捨てる方法がある。「一番やってはいけないのは掃除機」という。吸われた際ににおいを発し、さらに掃除機の排気口から悪臭を部屋中に拡散してしまうためだ。殺虫スプレーは効果が高いが、薬剤の成分が気になる場合は凍殺タイプのスプレーもある。【山崎明子】
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