「のじぎく賞」を贈られた柏田将輝さんとてりたま=兵庫県警宝塚署で2024年5月21日午前10時6分、土居和弘撮影

 飼い犬と深夜に散歩中、溝に落ちて出られなくなったお年寄りを見つけ、救助されるまで励まし続けたとして、兵庫県宝塚市の会社員、柏田将輝さん(30)に、県の善行表彰「のじぎく賞」が贈られた。愛犬が先にお年寄りの声に気付いて柏田さんを近くまで引っ張っていったといい、宝塚署で21日にあった贈呈式にはお手柄の愛犬も参加した。

 柏田さんらによると、4月12日午前1時ごろ、自宅から日課の散歩に出たところ、柴犬(しばいぬ)の「てりたま」(雄、7歳)が住宅街の一角で突然鼻をクンクンさせ、リードを持った柏田さんを引きずって前進した。

 周囲は街灯がなく真っ暗だった。いつものルートからそれると、助けを求めるような弱々しい声が聞こえ始めた。てりたまの先導で約20メートル進むと、道路脇の溝(深さ約1・2メートル、幅約50センチ)の中に70代の男性が横向きで倒れていた。

石井克央署長(右)から「のじぎく賞」の賞状を受け取った柏田将輝さんとてりたま=兵庫県警宝塚署で2024年5月21日午前10時4分、土居和弘撮影

 男性は自力では抜け出せないようで「苦しい」と弱々しい声を出した。手を握ると冷たく、落ちてから少し時間がたっているらしい。スマートフォンで119番と110番をし、腕を抱えて溝から出そうとしたが、動かない。「無理をするとけがをする」と思い、意識が遠のかないよう話しかけることにした。「今晩の食事は」「昔はどんな仕事をしていたの」――。救急隊が駆け付けるまでの約10分間、励まし続けた。

 男性は外出中、溝に落ちたライターを拾おうとしてバランスを崩し、はまったらしい。頭部にかすり傷ができたが、大事はなかったという。

 柏田さんに賞状を手渡した石井克央署長は「春とはいえ、夜は冷え込む。誰にも気付かれずにいた可能性もあった。迅速に対応してくれた」とたたえた。

 柏田さんは仕事で帰宅が遅く、てりたまとの散歩はいつも深夜。約10年前、自らもオートバイを運転中に事故に遭い重傷を負った。その際、道路脇の溝に落ちたが、目撃者が抱え上げ、励ましてくれた。その経験から「今度は自分がと思っていた。男性が元気でホッとしました」と話す。救助後間もなく、てりたまには「よくやったね」と頭をなでてあげたという。【土居和弘】

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