東京都江東区で23日午前4時過ぎ、シカを見たという110番通報がありました。付近には、病院や運送会社が立ち並び、比較的交通量が多い場所です。その後、下水道局の施設や運送会社の敷地内でも目撃され、その動物はシカだとみられています。
目撃した人:「営業所の敷地内でフェンスの外にいた。(Q.体長はどのぐらい)1〜1メートル50ぐらい。東京なので、まさかいるとは」
この思わぬ来訪者が特に注目された背景は、もしかしたら千葉で増え続ける害獣“キョン”かもしれないという懸念。
キョンは、小型のシカの仲間。名前の由来は、漢字の台湾語読み『キオン』からといわれています。
このキョンは、本来、中国南部や台湾に生息する動物です。千葉県勝浦市にあった観光施設から脱走、定着してしまいました。
野菜を中心にイネや果物などの農作物にも被害を与えるため、特定外来生物に指定されています。
住民:「人間に会う人数より、キョンにあう“人数”のほうが多い」
出産した翌日には妊娠できてしまうという繁殖力の高さで、爆発的に数を増やしていき、今や千葉県に7万頭いるといいます。
キョンが定着してしまった勝浦市。住民は高いフェンスを設置するなど、対策を施しています。さらに、もうひとつ、住民を悩ませているのは、女性の悲鳴のようにも聞こえる鳴き声です。
住民:「鳴き声、すごいですよ。もうキョンがなく声とは思えない、ギャーっていうような。人間であんな声出さないでしょ」
千葉県で、害獣駆除の対象となっているキョン。
君津市の猟師・原田祐介さん(51)は、地元で獲れたイノシシやシカ肉を販売しています。
猟師・原田祐介さん:「行政から補助金が出ている。イノシシやシカは1万円〜1万5000円くらい捕獲報奨金が出る。(キョンは)1頭あたり6000円前後の捕獲報奨金しかない。一生懸命、とる方は少ない」
こちらでは、キョンの肉も扱っていますが、常に売っているわけではありません。販売するために捕獲するのではなく、あくまで駆除した個体の肉が店頭に並びます。
猟師・原田祐介さん:「いただいた命ですから、きちんと二次利用してあげるのは大切なことだとは思うのですが、持続可能なビジネスにはなり得ないような生き物です」
キョンに市場価値を与えると、増やしたり、密かに放す人が現れ、生息域の拡大につながる恐れがあるからです。
千葉県としては、キョンは、完全な排除を目指す対象です。しかし、2022年度の捕獲数は約8800頭と爆発的に増えるキョンに対して駆除が追い付いていないのが現状です。
現在、キョンが生息しているとみられている地域は、千葉県の南部ですが、茨城県では、これまでに4回、目撃されています。茨城県としては、特定外来生物であるキョンの県内への侵入に危機感を募らせています。
茨城県環境政策課・飯村勝輝課長補佐:「まず天敵がいないということが第一点。繁殖力も強いので、あっという間に増えてしまう聞いています」
茨城県は、幅広く目撃情報を集め、キョンが住み着くのを防ぐため、新たな取り組みを今月中に始めようとしています。県内でキョンの写真や動画などを撮影し、情報提供すれば、報奨金を出す制度です。
茨城県環境政策課・飯村勝輝課長補佐:「どこで見かけたのか、いつ見かけたのか。そういったものを写真内に入れこんでいただけるように、県民からの情報提供を促進したいと考えています」
◆キョンの数を減らすのは、難しいのでしょうか。
東京都のキョン防除対策検討委員会にも参加する東京農工大学大学院・小池伸介教授に聞きました。
小池教授は「まず、キョンは素早く、捕獲が難しい。網を張っても、捕獲できるのは角のあるオスばかりで、子どもを産むメスを効率的に捕獲するのは難しい。現状、茨城県だけでなく、埼玉県にも広がっている可能性もある」としています。
対策としては、どうしたらいいのでしょうか。
小池教授は「どこまで広がっているか“現状の把握”が大事。生息エリアを探すためには、探知犬の導入も効果的。また、効率的な捕獲方法の開発も進めるべきだ」と指摘しています。そのうえで、「移動経路の遮遮断が大事」といいます。例えば、河川敷に柵を設けることなどを例に挙げています。
千葉県は、ネット柵の設置を推奨していて、キョンの場合は、高さ1メートル以上。また、柵の下からもぐり込まないよう、1メートル以内の間隔でペグなどで固定することとしています。
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