大阪湾で死んだマッコウクジラの処理費を巡り、大阪市が厳しい批判にさらされている。当初の試算額の倍以上で海運業者と随意契約。住民監査請求を受けた市監査委員が、金額ありきで契約交渉が進められた疑いがあるとして、横山英幸市長に再調査を勧告する事態に発展した。毎日新聞が入手した業者との交渉記録によると、処理を担当した大阪港湾局の当時の幹部が業者の意に沿う形で金額の引き上げを促していた。
クジラは2023年1月9日に大阪湾の淀川河口付近で見つかり、13日に死んでいるのが確認された。19日には市の依頼を受けた市内の海運業者が作業船で運び、紀伊水道沖に沈めた。緊急性のある作業だとして、入札せずに随意契約を進めた。業者はその後、市に8625万円の見積書を提出。一方、港湾局は3月初めに3774万円と試算し、両者の金額には大きな隔たりがあった。
市監査委員による監査結果などによると、3月3日に本来は交渉窓口ではない経営改革課長が業者との交渉役を申し出て、価格交渉が本格化。業者の担当者は元市職員で、経営改革課長とは旧知だった。港湾局は作業の特殊性などを踏まえた業者側の見積書に合わせる形で積算額を増やし、24日には7000万円以上の積算案について弁護士に相談していた。
毎日新聞は港湾局が作成した27日の業者との交渉記録を入手。記録によると、その場には経営改革課長のほか、海務課長と担当部長(いずれも当時)も同席。業者側は「一番ブラックボックスにできるのはクジラの清掃なので、そこをうまく8000万(円)台へもっていったらいいんちゃうの」と清掃費の上積みを提案。経営改革課長は「8000万(円)を超える数字を出さないと」とこれを後押しした。
また、金額を局長に諮る必要性を訴えた海務課長に、経営改革課長は「この期に及んでそんなこと言ってる時間ないやろ」などと迫り、海務課長が「僕がのみ込めない数字になってきてる」と抵抗すると、「何しに来たん? みんなそんな暇ちゃうで」と発言していた。局長の了解を得たとして交渉はその場でまとまり、市は3月31日、8019万円で随意契約した。
一方、経営改革課長はクジラの処理後、契約金額が支払われた4月27日までの間に、自費で飲料やおつまみを買ってこの業者を訪ね、飲食を共にしていた。市は癒着が疑われないよう業者との会食を禁止した内規に抵触すると判断。港湾局は「契約金額は適正だった」としている。【長沼辰哉、鈴木拓也】
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