米軍から感謝状を贈られた京丹後市の中山泰市長(中央の酒樽の左側)ら=京丹後市丹後町の米軍経ケ岬通信所で2024年5月24日午前11時20分、塩田敏夫撮影

 弾道ミサイルを探知・追尾する「Xバンドレーダー」を配備した米軍経ケ岬通信所(京都府京丹後市丹後町)は24日、「10周年記念式典」を基地内で開催した。米陸軍第14ミサイル防衛中隊が運用しており、在日米陸軍の上級幹部をはじめ、自衛隊幹部らが参列。中山泰・京丹後市長らと一緒に鏡開きをして祝ったが、「集団居住、集団通勤」など基地配備の際に防衛省が地元住民に約束したことが全面的には守られておらず、事故時の対応を含め課題が残ったままとなっている。

 国内のXバンドレーダー配備は空自車力分屯基地(青森県つがる市)に続く2例目で、2013年2月の日米首脳会談で決まった。2014年5月27日に建設工事が始まり、12月に本格稼働した。防衛省は米軍基地の人員については最大で軍人20人、軍属140人と説明してきた。

 防衛省は配備前の住民説明会で、「集団居住・集団通勤」を約束。警備会社の従業員の集団居住、集団通勤は始まったが、レーダーの関係会社については未だに実施されておらず、市内のアパートなどに居住しているとみられる。

 レーダー稼働後は、昼夜を問わない発電機の連続運転による騒音が周辺住民に深刻な被害をもたらしてきた。住民の再三の訴えで電力会社の電力が導入されたが、その後も事前連絡がないままに発電機を稼働させる事態が続いた。そのたびに京丹後市長が抗議し、最近になってようやく事前連絡がくるようになったのが実態だ。

 また、基地発足当初に米軍関係者による交通事故が多発。防衛省は「米軍の加害、被害を問わず全件を速やかに府と市に報告する」と約束したが、米軍の司令官によっては1年以上も全く事故を報告しないこともあった。

 急病人を搬送するドクターヘリを運航した際、レーダーを停波しない事態も発生し、搬送が遅れるケースもあった。中山泰市長は基地受け入れの際に「住民の安全・安心の確保が大前提」として言明しており、住民が事故の被害者になった時の対応を含め、住民の「安全と安心」の内実が問われている。

 式典では、防衛省近畿中部防衛局の茂籠(もろ)勇人局長が「基地は日米両国の安全保障に極めて重要。この日を迎えられたのは歴代司令官、米軍関係者のたゆまぬ努力と地元の理解のたまもの。米軍と地元のみなさんとの信頼構築に引き続き努めたい」とあいさつ。中山市長らに感謝状が贈られた。

 式典の様子を基地の外から住民たちが見守っていた。

 基地周辺住民でつくる「米軍基地建設を憂う宇川有志の会」の増田光夫代表は「世界中で戦争が拡大する中、(基地がある)宇川地区に住むわれわれ住民にとってはXバンドレーダーは危険な火薬庫となる。たかがレーダー基地とよく言われるが、真っ先に攻撃の対象となる。いざ戦争になったら最悪の事態を覚悟しなければならない。日本は今、南西諸島の基地配備に見られるように、平和憲法をなかぐり捨てて米軍に言いなりになって戦争の道に突き進もうとしているとしか思えない」と語った。【塩田敏夫】

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