除幕された石碑に手を合わせる遺族(手前は亡くなった男子学生の遺影)=山口県周防大島町の大島商船高専で2024年5月21日午後4時36分、大山典男撮影

 大島商船高専(山口県周防大島町)で、同級生によるいじめが原因で2016年5月に自殺した男子学生(当時15歳)の命日の21日、学生の言葉を刻んだ石碑(高さ約50センチ、幅約60センチ)が除幕された。記された言葉は「あなたが笑顔でいることをいのって」。学生が生前、20歳になった自分自身宛てに書いた手紙に残された言葉だ。学生の母親(53)が「笑顔で過ごすことを祈った息子の願いが届き、学生の皆さんがいじめに悩むことなく笑顔で毎日を過ごしていけるように」と選んだ。【大山典男】

 遺族が「いじめで学生が亡くなった事実を風化させず、再発防止につなげてほしい」と要望し、校内の一画に3月、いじめ撲滅の思いを込めて植樹。引き続いて周辺を70平方メートルほどの庭園に整備してベンチなどを設置し、石碑を建立した。石碑の文字は、学生の手書きの手紙から最後の一文を抜粋し、筆跡を拡大して彫り込んだ。

 庭園のお披露目を兼ねて石碑の除幕があり、藤本隆士校長ら教職員、在校生の代表も参加。学生の母親が「庭園を、ほっと息をつける場所として活用してほしい」と呼び掛け、在校生からの公募で、多様性を尊重するとの思いを込めて庭園が「にじいろ広場」と名付けられたことを紹介。「いじめは心身をむしばみ壊し、死に追い詰めます。二度とこのような悲しみが起こらないよう学校にはいじめの風化防止、再発防止に尽力してほしい」と訴えた。母親らが除幕し、全員で黙とうして冥福を祈った。

 同校が設置した第三者調査委員会は21年9月、男子学生の自殺は複数の同級生によるいじめが原因とする報告書を発表。しかし、いじめの認定まで5年以上かかり、同級生らが報告書の発表後間もなく卒業して指導の機会を失い、実質的な処分もできなかったため、学校側は卒業後も継続して指導していく方針を示していた。

 除幕後、学校側は藤本校長らが記者会見し、加害側の卒業生たちとSNS(ネット交流サービス)を通じて連絡を取り続けていると改めて説明。教員が面談して指導できるよう模索しているとした。学生の母親は「遺族としても会って話したい。『いじめではない』『そんなつもりじゃなかった』などと思って、受け入れていない元学生たちにきちんと伝える機会がなかった。学校側が尻込みしているようにも感じられ、さみしい思いがある」と語った。

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