元日に発生した能登半島地震では、陸路の寸断や断水などの影響で、多くの被災者がトイレの利用が困難となった。NPO法人「日本トイレ研究所」(東京都)は22日、被災地の避難所21カ所を調べたところ、設置された仮設トイレの8割超が和式便器だったと発表した。仮設トイレの設置日を把握している避難所のうち、設置に8日以上かかった避難所が4割に上った。足腰の弱い高齢者や子どもは和式を使えないこともあり、「奥能登地域の高齢化率は50%近くあり、支援のニーズとのミスマッチが起きていた」と指摘する。
調査は2月10、11日と同24、25日に、石川県輪島市内12カ所、七尾市内9カ所の避難所の運営担当者らにヒアリングし、災害用トイレの設置や利用状況を調べた。
発災当初は、調査した避難所21カ所の90%で便座に袋を取り付ける携帯トイレを使用していたが、発災から1カ月以上たった調査時点でも38%が携帯トイレを使用していた。
避難所に設置された仮設トイレは85%が和式便器で、調査した島村允也研究員は「避難所の中には和式便器を使用して高齢者が転倒してけがをした事例もあった」という。
これまで仮設トイレは和式が主流だったが、洋式便器の仮設トイレも普及が進んでおり、洋式での支援がさらに求められると指摘。建設現場では国土交通省の基準を満たし、男女が使用できる洋式仮設トイレ「快適トイレ」の普及が進んでおり、災害時にも活用すべきだとしている。一方、調査時点で避難所7カ所に設置されていたトイレトレーラーやトイレカーは全て洋式便器だった。
仮設トイレの設置日がわかる避難所10カ所のうち、設置が最も早かったのは1月3日で1カ所、同4~7日が5カ所と、6割が1週間以内に設置できた。しかし、設置に8~14日かかった避難所が3カ所、15日以上を要したところも1カ所あった。道路の寸断などにより支援が行き届くまで地域によって時間差があり、こうした状況を考慮した上での準備が必要だという。
加藤篤代表理事は「過去の震災でもトイレ不足に陥る『トイレパニック』になったが、能登半島地震でも全く変わらない状況で被災者はつらい状況を強いられた。災害が起きてから効率的に集めるのは無理で、平時から現場に備えが必要」と訴えた。【宮城裕也】
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