6月から始まる所得税などの定額減税について、政府が給与明細に所得税の減税額を明記するよう企業などに求めていることに対し、インターネット上では21日、怒りをあらわにする投稿が相次いだ。政府にとっては減税効果を実感してもらうための方策だったが、多くの人々には政権浮揚を目的に事業者に多大な負担を強いる「愚策」だと映ったようだ。
「たった一回の減税のために、全国の事業者を巻き込んで苦しめるこのしょーもない制度がなぜ成立したか、誰が立案したのかを(NHKの)プロジェクトXで取り上げてほしい」「やってる感創出のために、企業の手間を増やすのはやめてもらえませんかね」――。X(ツイッター)では一時、「定額減税」や「給与明細」といった言葉がトレンド入りし、こうした書き込みが続出した。
定額減税は1人当たり所得税3万円、住民税1万円。岸田政権が物価高対策の一環として打ち出した政策で、所得税の場合は、年収2000万円以下の納税者と扶養家族が対象となる。
政府は定額減税を通じて物価高を上回る所得増の実現を目指しているが、歴史的な円安も相まって物価は上昇し続け、1人4万円では到底足りないとの声は根強い。更に多くの企業は給与明細を定型の書式で作成しており、減税額の追記は各社の経理・人事部門に多大な負担を強いる。X上には「大人しく減税だけしていれば絶賛されたのに、だれかエラい人が余計なこと言ったんだろうな」との投稿もあった。
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件と絡めた批判も多数見受けられた。元財務官僚で経済学者の高橋洋一氏は「政治資金では非課税・領収書なしでやたら寛容だが、民間の話ではインボイスや今回の件で几帳面(きちょうめん)で厳格すぎで事務負担が多すぎだろ。この差は何だ」とXで指摘した。
岸田文雄首相は定額減税で政権浮揚を図り、状況次第で衆院解散・総選挙を模索する気では――との観測も永田町ではくすぶる。立憲民主党の小沢一郎氏の事務所は「自分たちの金でもないのに恩着せがましく『少しは返してやるから感謝しろよ、次の選挙は自民党に入れろよ』というだけのこと」だとXに投稿。「選挙後には防衛増税と保険料引き上げが待ち受ける」とも記した。【宮島寛】
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