子牛8頭がヒグマに襲われたD型ハウス(中央)=北海道別海町中春別の育成牧場で2024年5月21日午後3時35分、本間浩昭撮影

 北海道別海町の子牛の育成牧場で21日、D型ハウスで飼われていた子牛8頭が死傷しているのを男性従業員が見つけた。うち4頭は死んでおり、足跡などからヒグマに襲われたものとみられる。道東では放牧中の牛などを襲い、「OSO(オソ)18」の名で呼ばれたヒグマが2019年から5年間で牛66頭を死傷させる被害が続いただけに、酪農家らは新たな「牛襲いグマ」の出現に戦々恐々としている。

 被害があったのは別海町中春別のJA中春別の子会社「なかしゅんべつ未来牧場共和育成センター」(沢田光男センター長)。ヒグマは生後1カ月未満の子牛を育てているD型ハウス(12頭飼育)に侵入。体重50キロ前後の4頭がハッチ(個室)から引きずり出されるなどして死んだ。一部は内臓を食べられていたという。

 他の4頭はハッチから引き出されずに生存していたが、顔や体にかみ傷を負った。残る4頭は無事だった。ヒグマは姿を消したが、子牛を食べに戻って来る可能性があり、道猟友会別海支部のハンターが警戒している。

 同センターの友貞(ともさだ)義照専務(63)は「一番弱い新生児が今回狙われた。再び侵入するかもしれず、箱わなを設置してもらう」と語った。その上で、「何より大事なのは人間に被害が及ばないこと。見回りを強め、複数で作業を行うことを徹底させたい」と話していた。

 町によると、前脚の幅が約17センチで、単独の雄の犯行とみられる。

 この牧場は酪農家から預託を受けた子牛を22カ月まで育てる施設で、約280ヘクタールで約1000頭を育てている。約100メートル離れた宿舎で従業員計9人が暮らしているが、前日夜から21日朝にかけて異常はなかったという。

 道東の標茶町と厚岸町では19~23年、放牧中の牛などを襲い、オソ18の名で呼ばれた雄のヒグマが出没し、計66頭を死傷させた。オソ18は23年7月、釧路町郊外で駆除され、捕獲時の体重330キロ、推定年齢は9歳6カ月だった。【本間浩昭】

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