墓地の除草を年3回から2回、公園遊具の点検巡回を月3回から1回に――。兵庫県西宮市が市民サービスを削って事業を見直したところ、約2億円の経費削減効果が見込まれることになった。ただし想定を大きく下回り、見直し作業を委託したコンサルタント会社には計約1億3400万円を支払う予定となっている。赤字財政の改善に取り組む狙いは達成されたと言えるのか。
市は2023年7月、外部の視点から事業を見直すため、提案内容を総合評価する「プロポーザル方式」で事業者を公募。ボストン・コンサルティング・グループ合同会社(東京都)を選んだ。委託金額は2970万円。さらに、コスト削減した額の50%(上限4億円)を上乗せで支払う成果連動型の契約だった。
コンサル会社への事前ヒアリングから見直しの対象とした事業は、施設管理や清掃・警備などの委託料▽情報システムの使用料や賃借料▽消耗品費など――の計約80億円。この1割となる最大8億円を削減目標とした。
ところが見直しを始めると、複数年契約の事業は中断すると違約金が発生するため対象外に。既に適正単価で見直し効果の低いものも判明し、対象は10億円規模に縮小した。その結果、削減効果は想定を下回る約2億870万円になる見込みとなった。
見直すのは、放置自転車の管理業務人員を2人から1人に、公園街路樹の除草回数を年3回から2回に減らすなど市民サービスに直結するものもある。効果額が最大だったのはエレベーターの遠隔点検システム導入などの約3741万円だった。消耗品購入やコピー機の一括契約化は市内事業者との調整の問題で時間切れとされた。
市はこれらの結果を10日の市議会総務委員会で報告。「仕様書を細かく見たり、他自治体のサービス水準と比較したりするコンサル会社のノウハウを得られた」と説明したが、市議から疑問や落胆の声が相次いだ。
渋谷祐介市議(会派・ぜんしん)は「期待していたが、見直し内容からすると委託費が高い。回数や人を減らす提案は市職員でもできる。事業者に頼らないとできないことだったのか」と質問。これに対し、時井一成政策局長は「正直、悔しい気持ちはあるが、職員だけではここまで来られなかった」と釈明。多くの対象事業が見直されず残されたことについて「逆に自分たちで見直すことができると前向きに捉えたい」と述べた。
市は22年度決算で単年度収支が42億円超の赤字となり財政危機を認識。23年10月に財政構造改善の基本方針を策定し、人件費抑制や市有地売却などの対策を進めている。
コンサル会社への委託料2970万円は支払い済み。市は残る成果連動の報酬の見込み額約1億435万円の補正予算案を市議会6月定例会に提出する予定だが、反発も予想される。【稲田佳代】
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