日本で暮らす中国人をターゲットにした特殊詐欺が相次いでいる。電話で中国の公安当局や大使館をかたり、「逮捕」や「強制送還」をちらつかせて金銭をだまし取るのが典型的な手口だ。埼玉県警には2021年以降、被害の届け出が少なくとも9件あり、SNS(ネット交流サービス)を通じて注意喚起している。
埼玉県警や警察庁によると、特殊詐欺グループは携帯電話に突然連絡をしてくる。公安当局職員や大使館員を装って「あなたの口座が不正に使われているので、逮捕、強制送還される」などと不安をあおり、免れるには保証金が必要と金銭を要求するという。
誘拐事件を「自作自演」するよう指示する手口もある。拘束・監禁されている様子をスマートフォンで自撮りさせて、中国にいる親族へ動画を送信。身代金名目で現金を振り込ませたケースが確認されている。
日本で暮らす中国出身の男性(34)は「日本人に比べて中国人は、警察など国の組織に対して警戒感が強い。詐欺グループはそうした心情に付け込んでいるのではないか」と指摘する。そのうえで「『強制送還』という言葉をちらつかされ、パニックになる人もいるだろう」と話した。
埼玉県警は、あなたの名義が使用されている▽無罪を証明するため、お金が必要だ▽払えなければ強制送還される――などと、だまし文句を列挙したチラシや動画を作製。中国語でフェイスブック(FB)に投稿し注意喚起している。担当者は「大使館員を名乗る人物から電話があっても1人で判断せず、電話を切って警察や身近な人に相談してほしい」と呼び掛ける。
また、文部科学省は昨年8月、中国人留学生を受け入れる学校法人などに対し、特殊詐欺の手口を学生に周知するよう求めた。
【安達恒太郎】
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