口汚い言葉で妨害行為を繰り返していた、政治団体『つばさの党』の幹部3人が17日に逮捕されました。先月の衆議院補欠選挙で、他の陣営の活動を妨害した、公職選挙法違反の疑いです。男たちは「表現の自由」だと主張していましたが、警視庁は特別捜査本部を設け、異例の態勢で調べを進める方針です。
■容疑者「表現の自由」を主張
カメラの放列に、男は満面の笑みを浮かべ、ピースサインを掲げたまま警視庁本部に入っていきました。
公職選挙法違反の疑いで逮捕されたのは、つばさの党の代表・黒川敦彦容疑者(45)。党の幹事長で補選に立候補していた、根本良輔容疑者(29)。党の組織運動本部長・杉田勇人容疑者(39)の3人。
選挙の自由を妨げた疑いが持たれているのは、告示日の乙武陣営に対してです。演説中、選挙カーを接近させると…。
黒川敦彦容疑者
「乙武、お前が仕切れ。お前が仕切れ。我々もここに来る権利があるの。お前らの現場の責任者を出せ。ちゃんと話すから」
さらに、電話ボックスの上に座り、拡声機を使って大声でまくしたてました。
黒川敦彦容疑者
「乙武、お前」
乙武氏を応援した小池知事に対しても…。
「おい小池、嘘つき」
選挙後、家宅捜索を受けると、小池知事の自宅前で抗議活動を展開。
杉田勇人容疑者
「白塗りクソババア」
根本良輔容疑者
「我々が悪いことをしてるかのような印象操作が繰り広げられている。警察を動かしているのは小池以外あり得ない。お前のせいだろ」
黒川敦彦容疑者
「今の政治家が嫌いな国民が多い。我々にある期待は“嘘つきな政治家の嘘を暴いてくれ”と」
黒川容疑者らは「表現の自由の中で適法なことをやっている」と主張しています。こうしたなか、警視庁は任意捜査では限界があると判断し、逮捕に踏み切りました。3人の認否は明らかにしていません。逮捕を受けて、小池知事はこう話しました。
東京都 小池百合子知事
「問題は、模倣するような人たちが出てくる懸念も残るところ。他の候補者をおとしめることが続くと、政治に対しての無関心どころか、嫌悪感をさらに深めてしまう」
乙武氏はSNSを更新しました。
乙武洋匡氏のX
「法律ギリギリの範囲を狙って選挙を荒らしまくり、有権者の“聞く権利”を奪う悪質な行為が今後二度と繰り返されないよう切に願っています」
■複数候補が被害届「怖い思いした」
他の候補者も妨害を受けたとして、警視庁に被害届を出しています。そのうちの1人が当選を果たした、立憲民主党の酒井なつみ議員です。
立憲民主党 酒井なつみ衆院議員
「私たちの訴えが通常の選挙のようにできなかったことが悔しかったし、怖い思いもした選挙でした」
妨害を受けながらの選挙戦でした。
立憲民主党 酒井なつみ衆院議員
「演説をすることもできないまま中止せざるをえなかった。表現の自由というのは大切だと思うが、自由をはき違えた妨害行為がない社会にしていきたい」
日本維新の会の公認候補、金澤ゆい氏も被害届を出しています。
日本維新の会 金澤ゆい氏
「(Q.選挙活動で伝えられなかった部分は)一番は演説のスケジュールが出せなかった。それを出すと、つばさの党の方たちが来てしまう。その時点で自由な選挙ではないなと思っている」
当選には届きませんでした。選挙期間中に妨害を止められればとの思いもあります。
日本維新の会 金澤ゆい氏
「公職選挙法を逆手にとってやられていると思っているので。私たちや警察が選挙期間中は動けないとなっていたので。本当は選挙中にどうにかできれば1番でしたけど、どうすることもできなかった」
警視庁は異例の捜査体制で臨んでいます。捜査2課は18年ぶりに特別捜査本部を設置。複数の陣営からの被害届をすでに受理していて、実態解明を進める方針です。
■“選挙妨害”の疑い 逮捕の背景は
警視庁担当の屋比久就平記者に聞きます。
(Q.逮捕に踏み切った理由は何ですか)
屋比久就平記者
「今回の問題は、選挙や表現の自由に絡むため、警視庁は慎重に捜査を進めてきました。それを踏まえたうえで、状況を精査した結果、違法性があると判断したということです。現場レベルでの警察官による注意や、度重なる警告にもかかわらず、黒川容疑者らは長期間にわたり継続的に妨害行為を行ってきました。さらに、ポイントとして挙げられるのは、候補者やつばさの党に批判的な人物らの自宅前などで、選挙後に街宣行為をしていたことです。こうしたことから、任意での捜査には限界があるとして、家宅捜索を行い逮捕に至りました。7月に都知事選も控えるなかで、公正な選挙に影響があるとの判断も背景にあるとみられます」
(Q.捜査態勢も異例となっています。汚職事件や詐欺事件に加え、選挙違反も担当する警視庁捜査2課が、18年ぶりに特別捜査本部が設置されました。これが意味するものは何ですか)
屋比久就平記者
「今回、選挙違反の捜査としては異例となる、数十人態勢の特別捜査本部を設置して捜査にあたります。これは警視庁の本気度の表れと見ることができます。警視庁にはこれまで、複数の陣営から被害相談が寄せられていることもあり、その捜査を行うために多くの人員を投入する必要性があったことも背景にあるとみられます。警視庁は、演説妨害以外の妨害行為についても立件することを視野に、慎重に捜査を進めるものとみられます」
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