屏風のように板が並んだ図書館外観=滋賀県彦根市提供
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 世界的な建築家、坂茂(ばんしげる)さん(66)が滋賀県彦根市の中古ホールを環境重視の図書館によみがえらせようとしている。同市が誇る国宝「彦根屏風(びょうぶ)」をイメージした外観で、最先端の木造技術などを導入。斬新な施設再生プロジェクトとして注目を集めそうだ。

 坂さんは1990年代から国内外の被災地で、紙管を使った住居などを提供している。集成材を生かした仏「ポンピドー・センター」分館などで知られ、2014年には建築界のノーベル賞といわれる米プリツカー賞に輝いた。

 彦根市は、国民スポーツ大会(25年)などに向け、JR南彦根駅西側にプロシードアリーナHIKONEを建設。その北側にあった市交流施設「ひこね燦(さん)ぱれす」(91年開館)は22年度に解体し、駐車場にする予定だった。しかし「建物はまだ十分使える」と批判の声が上がり、21年に就任した和田裕行市長は、図書館として再生する計画を打ち出した。

図書館の基本設計案を説明する坂茂さん(中央)=滋賀県彦根市元町で2024年2月20日午後1時9分、伊藤信司撮影
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 昨年夏、基本設計公募に8件の応募があり、坂さんのプロジェクトが選ばれた。L字型の鉄筋コンクリート2階建て(延床面積2267平方メートル)の内側に扇型ラウンジを増築する。周囲を集成材板とガラスでジグザグに囲み、直射日光を遮る一方で館内も見通せるようにする。提案書では「建物に集まる人々の様子を映し出し、あたかも彦根屏風に描かれた絵のように見えます」と説明している。

 このほか、自然換気や天窓による省エネルギー▽少ない木材でも強度を保つ構造のはり▽宙に浮かんだような児童用スペース――などの工夫を盛り込んでいる。市によると同様の図書館新築の場合は22億円以上かかるが、改築では補助金や交付税を活用でき、約7億円に抑えられるという。28年度の完成を目指している。2月に開かれたプロジェクト会議で坂さんは、建物を簡単に壊す風潮は環境面で問題だと指摘し、「リノベーションする、用途を変えていくというのが、世界中で建築の重要なテーマになっている」と訴えた。【伊藤信司】

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