紫綬褒章に選ばれた文楽の竹本千歳太夫さん=大阪市中央区(渡辺恭晃撮影)

政府は令和6年春の褒章受章者を28日付で発表した。学問や芸術分野で功績を残した人に贈る紫綬褒章には、人形浄瑠璃文楽太夫の竹本千歳太夫さん(64)らが選ばれた。

究極の語り追い求め

人形浄瑠璃文楽の語り手である太夫になり約45年。紫綬褒章の知らせに「語れど語れど、満足することはない。でも、しっかり(次代に)伝えろよ、とお叱りと励ましをいただいたんじゃないかと思います」と喜ぶ。

中学2年のときに聴いた四代目竹本越路太夫の語りに感動し、昭和53年に入門。令和4年に太夫の最高位「切場(きりば)語り」に昇格した。

文楽の義太夫節は、生死のはざまで浮かび上がる真の情愛を語る。そのために太夫は、「節(ふし)とかリズムとか覚えることはあるけれど、義太夫節が勉強の『対象』になってはいけない」とし、「自分と不即不離の関係、つまり『NO 浄瑠璃 NO LIFE』でないと、感情は表現しきれないんです」と言う。

弟子たちにも言葉で教える以上に、「語りざまや生きざまを見せることで、義太夫節を語るとはこういう人生なんだ、と感じてほしい」と望む。

人間の情がほとばしる全身全霊の語りで、過去の名人たちのような「一言で心臓をひとつかみにする」究極の語りを追い求める。(田中佐和)

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