今朝も寅子(ともこ)は生き生きと奮闘していた。時代の壁、性の壁にぶちあたり、それでも良き未来を作るため意志を貫こうとする。その姿に朝から背中を押されている。いい年してドラマに励まされるなんてと、ちょっと自分でも驚いているのである。

寅子とはNHK連続テレビ小説「虎に翼」のヒロイン。日本初の女性弁護士のひとり、三淵嘉子さん(1914~84年)をモデルに、伊藤沙莉(さいり)さんふんする寅子が、見合い結婚を勧める母親を振り切って日本の女性法曹養成のさきがけとなった明律大学女子部に入学、同じ志を持つ仲間たちと懸命に学び、さまざまな苦難と格闘する姿がユーモアあふれるタッチで描かれている。

劇中、裁判の場面があった。離婚を願う妻だが、戦前のこの時代、夫が妻の財産を管理するという法律のため、母の形見の着物を返してもらえない。そんな理不尽なことがまかり通っていたのかと驚いた。だが寅子たちは「法律は弱い立場の人を守るためのもの」と、しなやかに立ち向かっていく。このドラマがいいのは、寅子たちがヒロイン然としているのではなく、必死に悩み考えているところであり、寅子を演じる伊藤さんのはつらつとした演技でもある。

寅子が大学に通っていたのは戦前だが、私の大学時代の昭和50年頃でもまだ、「女とクリスマスケーキは同じ」などと言われたものだ。「25歳(クリスマスの25日に合わせて)を過ぎたら売れ残り」という意味である。大学卒業時には男女雇用機会均等法もなかった。社会に出るといくつかのことに絶望もした。それでも頑張っていこうと思えたのは、寅子のような先輩が道なき道を切り開いてくれたおかげであろう。

そんなことを考えていると、千年前に活躍していた大先輩を見つけた。NHK大河ドラマ「光る君へ」のヒロイン、紫式部や清少納言である。これまで紫式部が書いた「源氏物語」の映像化はあったが、彼女たちが何を思い、どんな生活をしていたのか、描かれることはほとんどなかったと思う。ドラマはフィクションもあろうが、彼女たちが漢詩について自分の意見を堂々と述べている場面など、見るとうれしくなる。

ここまで時代を切り開いてくれた先人たちに感謝である。(典)

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