4月1日にスタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」は、日本初の女性弁護士の一人でのちに裁判官にもなった三淵嘉子さんの人生をもとに、さまざまな障壁の前に女性が自由に生きられなかった時代を描いている。15日からの第3週では、伊藤沙莉さん演じるヒロイン寅子(ともこ)が、月経症状に苦しみ寝込むシーンが登場。タブー視されがちな月経を真正面から描いたことに共感する声がX(旧ツイッター)に相次いで投稿された。寅子が生きる昭和初期の月経を巡る環境はどのようなものだったのか。生理用品の歴史に詳しい歴史社会学者の田中ひかるさんに話を聞いた。
下腹部さすり、大きなため息
注目されたシーンは15日に放送された。
昭和8年、寅子は明律大学女子部2年生に進級するも、学生の退学が相次ぎ、女子部は存続が危ぶまれていた。寅子が新入生獲得に向け、忙しく駆け回る中、日常のひとコマとして、そのシーンは描かれた。
帰宅した寅子は、自室で大きなため息をつき、お腹をさする。袴のひもをほどき、下腹部に視線を向け「うっわぁ」と声を漏らして天を仰いだ。
「寅子は『お月の物』、つまり月経が少々、人より重めでした」。寝込む寅子の映像に重ねて、ナレーションで大学を4日間休んだことが明かされた。
「画期的」との声も
生理を巡る場面は18日の放送でも描かれた。X上では「朝ドラで『生理』なんて言葉が出てくるの少なくとも私は初めて聞いた」と驚く声や、「生理が重い主人公が描かれるのは画期的」「4日休んじゃう生理痛のツラさがリアル」など共感する声が相次いだ。
ドラマでは、寅子たちが大学側に女子トイレの設置を求めるシーンもあり、Xでは「大学側が男性ばかりで想像力が追いついてない」と当時の環境に思いを馳せる人もいた。
脱脂綿で処置していた時代
昭和初期の女性たちは、実際、どのように生理ケアをしていたのか。
「生理用品の社会史」(角川ソフィア文庫)の著者で歴史社会学者の田中ひかるさんは「当時、生理の処置に使われていたのは、主に脱脂綿や使い古した布だった」と語る。
脱脂綿などをあてがうために細い布を丁の字に縫い合わせた「丁字帯」が使われたり、工場などで肉体労働に従事する女性たちは、脱脂綿を膣内に詰めてしのいだりしていたという。
「ドラマに登場する上流階級の女性であれば、外国製のベルト式の高級な月経帯を使っていたかもしれないが、経血を吸収するもの自体は脱脂綿に変わりなかった」と田中さん。
現代女性の多くが使っている生理用品のナプキンが日本に登場するのは、「アンネナプキン」が発売される昭和36年のこと。女学生の寅子たちがナプキンを使えるようになるまでには、30年近く待たなければならなかった。
田中さんによると、生理休暇についても、大正期に女性教員や看護師ら働く女性が増え出し、生理休暇を求める運動が起こり始めた。しかし、全ての女性に権利として認められたのは戦後の労働基準法に盛り込まれた昭和22年のこと。それまで長い年月がかかった。
田中さんは「多くの人が視聴する朝ドラで、女性の生理を巡る苦労が可視化されることで、現代まで続く女性の健康課題への理解が深まるきっかけになるのではないか」と話している。
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