現代ミュージカルの巨匠、スティーヴン・ソンドハイムが楽曲を手掛けた「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」が4月27~29日、大阪市北区の梅田芸術劇場で上演される。宮本亞門が演出する日本版は8年ぶり5度目の再演だ。ジョニー・デップ主演の映画では子役が演じた純粋な青年、トバイアス役を平成19年の初演から務める武田真治は、「当時30代半ばだった僕も51歳。年をとり悪条件になる中で、挑戦だなという気持ちです」と語る。
舞台は18世紀末のロンドン。無実の罪で流刑となった理髪師(市村正親)がスウィーニー・トッドと名乗り、パイ店を営むミセス・ラヴェット(大竹しのぶ)の手を借りて始める狂気の復讐(ふくしゅう)劇だ。
ラヴェットを慕うトバイアスは社会の底辺で生きるか弱き存在。「すれ違う全ての人におびえるような役」(武田)だが、初演時の稽古では、「台本の読解力が本当に足りなくて、『たくましく生きる不良少年』と解釈してしまった」と反省する。
演出家の意図に応えられずに悩む武田の足に宮本はある日、血のりの付いた包帯を巻いた。その瞬間、けがを病院で診てもらえずに悪化させて足を引きずっている、哀れなトバイアス像が生まれたという。
「まだ若くてとがっていた僕に必要な『足かせ』を作ってくださったんです」(武田)。それは観客に「武田真治がどこに出ているか分からなかった」と言わしめるほどの〝変身〟だった。
華奢(きゃしゃ)で中性的な印象だった青年時代からは一変して、近年は鍛え抜かれた肉体を持つ〝筋肉タレント〟としても人気だ。トバイアス役には少々たくましい肉体だが、「僕は日本一着やせする『細マッチョ』なので大丈夫。でも、足かせの包帯は巻きます。わんぱくになりすぎないように」と冗談めかして笑う。
5度目の再演にして初めて、20歳近く年下の加藤諒とのダブルキャストで挑む。「役のイメージを一新したいなら残留キャストはいない方がいいはず。僕が今回残ったのは、僕のトバイアスにもどこかいいところがあって、それを若い世代に伝えていってくれ、ということなのかもしれない」と武田。「実は亞門さんに認めてもらえていたのかな、という気持ちにやっとなれました。加藤君が演じるトバイアスを見ていて新たな発見もある。8年ぶりですが、かなりブラッシュアップされていると思います」とはにかんだ。
梅田芸術劇場(06-6377-3800)。(田中佐和)
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