AI半導体向け3~5nmプロセスの旺盛な需要が、TSMCの業績拡大を牽引している。写真は台湾の新竹市の本社工場(同社ウェブサイトより)

半導体の受託製造(ファウンドリー)世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の業績が、AI(人工知能)半導体の旺盛な需要を背景に拡大している。

同社は4月18日、2024年1~3月期の決算を発表。同四半期の売上高は前年同期比16.5%増の5926億4000万台湾ドル(約2兆8213億円)、純利益は同8.9%増の2254億9000万台湾ドル(約1兆735億円)に上り、アナリストの事前予想をそろって上回った。

なお、ロンドン証券取引所グループ(LSEG)のデータによれば、1~3月期の業績に関するアナリスト予測の平均値は売上高が5829億4000万台湾ドル(約2兆7751億円)、純利益が2135億9000万台湾ドル(約1兆168億円)だった。

先端AIチップを一手に製造

製造技術の世代別に見ると、現時点の最先端である3nm(ナノメートル)プロセスは1~3月期の総売上高に占める比率が9%と、直前の2023年10~12月期(15%)より低下した。その一方、5nmプロセスは受注が拡大し、売上比率は37%と前四半期(35%)より上昇した。

世界的なAIブームが続く中、強力な演算能力を備えるサーバー用AI半導体の需要が急拡大している。TSMCは、その受託製造をほぼ一手に引き受けている。エヌビディアの主力チップ「H100」、アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)の「Instinct MI300」、インテルの「Gaudi3」などは、いずれもTSMCの5nmプロセスを採用しているとされる。

「サーバー用AI半導体の売上高は、2024年は少なくとも(2023年の)2倍以上になり、総売上高の11~13%を占めるだろう。その後も年率50%の成長を続け、2028年には総売上高の20%を超えると予想している」。TSMC総裁(社長に相当)の魏哲家氏は、決算説明会でそう述べた。

TSMCは世界最先端の2nmプロセスの量産準備を着々と進めている。写真は3nmプロセスの主力工場である台南市のFab 18(TSMC提供)

TSMCは、次世代の2nmプロセスの量産を2025年10~12月期に開始する計画だ。それに関して魏氏は、次のような強気の見通しを示した。

「わが社は、ほぼすべてのAIチップの開発メーカーと協力関係にある。彼らはTSMCの2nmプロセスに高い関心を示している。2nmプロセスは(需要が急速に立ち上がり)量産開始から2年間の生産量が3nmや5nmのときを上回るだろう」

4~6月期も成長継続見込む

今後の業績見通しついて、TSMCは4~6月期の売上高を196億~204億ドル(約3兆286億~3兆1522億円)とする予想値を示した。その中間値を用いて試算すると、4~6月期は1~3月期比で6%、前年同期比で27.6%の増収を見込んでいることになる。

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とはいえ、半導体業界全体に目を転じると、TSMCの好調ぶりはむしろ例外だ。旧世代のプロセス技術を使う一般的な半導体は、需要回復の遅れから現在も在庫調整が続いている。

そのためTSMCは、2024年の半導体業界全体の成長率に関する予想を下方修正し、「メモリー半導体を除けば2023年比で10%程度」(魏氏)という見方を示した。

(財新記者:翟少輝)
※原文の配信は4月18日

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