結果が良くないときは「必ず」自分に原因アリ
望み通りの結果が得られなかったとき、あなたは見て見ぬふりをしていませんか?
「運が悪かった」「あいつのせいだ」と自分の非を認めなかったり、「何かの間違いだ」と現実を直視しないようにしていませんか?自分なりの方法に固執し続けようとしてはいませんか?
結果そのものを軽視したり、疑ったりする姿勢は、浅はかで、傲慢なものです。極めて非科学的な態度でもあります。
その結果がどのようなものであろうと、あなたが気に食わないものであっても、まずは謙虚な気持ちで受け入れなければなりません。そして、そこから軌道修正を行っていく。事態をより良い方向に好転させられるよう、あらためて観察、分析、判断、行動を積み重ねていくべきです。そこからしか、成功は生まれません。
良くない結果は「方法が不適切であった」と、私たちに教えてくれています。ありがたいことだと、感謝するべきではないでしょうか。
「最悪・最低」こそ「最高」である
「結果が良くないときは、必ず自分が間違っている」
私がこの法則に気づいたのは、事業を始めて比較的早い時期のことでした。
1967年、サイゼリヤの1号店を出した頃。最初はお客様に来ていただけず、「わけのわからないものを出しているらしい」という悪評しか立たなかった時期がありました。
「駅から近くもない、商店街の長屋の2階」という最悪の立地。「昼間から閑古鳥が鳴いている」という最低の客足。そんな状況に頭を抱え、疲弊しきっていた私に、驚くべきアドバイスをしてくれた人物がいました。それは、私の母親です。
驚くべきことに、母は「最悪」の立地と「最低」の客足について、「お前にとっては最高のことなんだよ」と言い続けてくれたのです。若かった私には、母の本意がしばらくの間、まったく理解できませんでした。
しかしあるとき、私は3つのことに気づいたのです。
1つ目は、「サイゼリヤのメニューは、どれもうまい」というのは完全な勘違いで、実は「まずい」ということ。
2つ目は、「サイゼリヤの価格は安い」というのは思い込みにすぎず、実は「高い」ということ。
3つ目は、「最悪だ」と信じていた店の立地は、「最悪」なんかではなく、母の言う通り実は「最高」だったこと……。
サイゼリヤの1号店は、実際のところ、確かに商売には向いていない立地でした。だからこそ、たくさんの工夫や改善を重ねることができたのです。その結果として、サイゼリヤの強みである「低価格、高品質、高生産性」に向けて努力することができた。私はそう理解しています。
現在、サイゼリヤは海外も含めて1500店舗以上を展開しています。もし1号店が「商売に向いている立地」だったら、どうなっていたでしょうか?
街場のレストランで終わっていたかもしれません。普通の料理を出していても、立地が良ければお客様は来ますから、工夫も改善も必要がないのです。
母が何度も指摘してくれたように、商売に向いていない立地に店を出したことは、偶然とはいえ非常にラッキーだった。ようやく、そう気づけたのです。
とはいえ、現状「さしておいしくないメニュー」を、劇的においしくするのは至難の業でした。でも、私にすぐできることがありました。
自分中心をやめることが「成功の近道」
それは値下げです。お客様は1円でも安いほうがうれしいに決まっています。
最初は、まず全体的に価格を3割下げました。しかし、客足は変わりません。
次に、5割引きに踏み切りました。つまり半額セールです。それでも、お客様の数は増えません。
そこで、お客様に来ていただきたい一心で、7割引きにしたところ、突然お客様が殺到し始めたのです。
客数でいうと、それまでが1日5~10人だったのが、7割引きにしてからは1日なんと約500人。7割引きセールは、当時は大赤字でした。それはまさに文字通り、採算度外視の出血大サービスだったのです。
ですが、新規のお客様が増え、リピーターになってくださる方も増え、徐々に粗利が出てくるようになると、経営も安定するようになりました。
私たちの頭の中に浮かぶ考えは、だいたい「自分中心」のもの。それをやめるためには、いったんその考えを逆にしてみると、真実に近づけます。優秀だと思っていた自分は、実はまだまだ力不足なのかもしれない。最悪だと思っていたあの人は、実は私にとって最高かもしれない。
あなたも、一度このように「すべて逆なのだ」と考えてみてください。人生に行き詰まりを感じている人は、突破口を開くきっかけになるはずです。
考え方を逆にすると、だいたい正しくなる
自分中心をやめるというのは、大きなパラダイムシフト(当然と考えられていたものの見方や考え方が劇的に変化すること)です。
私はこれを「天動説」から「地動説」への移行にたとえています。
仕事でも人間関係でも、結果が思わしくないときは、「世界は自分を中心に回っている」という考えにとりつかれているものです。ですから、考え方を次のように変えてみてください。
「残念ながら、世界は私を中心に回っていない」
「自分は世界の一部でしかなく、みんなと一緒に回っている」
それだけで、事態は面白いように好転し始めます。その理由を天動説と地動説にたとえて説明してみましょう。
「自分中心」の考え方は、まさに「天動説(=地球中心説)」です。
天動説とは、ご存じの通り「私たちが住む地球は宇宙の中心にあって、太陽や月をはじめとするすべての星々が、地球の周りを回っている」という世界観のこと。
2世紀のエジプト・アレクサンドリアの天文学者プトレマイオスの考えがもとになっていて、その後1400年もの間、信じられ、そこに疑問をさしはさむ人はいませんでした。
その後、16世紀に提唱されたのが、「地動説」です。
ポーランド生まれのコペルニクスが1543年の著書で「地球やその他の惑星が太陽の周りを回っている」という「地動説」をとなえました。そう考えると、惑星の動きなどを無理なく説明できるからです。
この説は、当時カトリック教会からも異端として否定されていました。
確かに、星空を見上げてみると、地球が中心にあるような気がします。当時の文化や観測技術を考慮すれば、天動説を支持する気持ちも理解できます。
一方で、「地球は人間が住む特別な星である」「すべての天体は地球のしもべである」という人間のエゴが根底にあったことも間違いないでしょう。
地動説を前提とすると、天文学における無理、矛盾がどんどん解消されたことから、17世紀、ようやく「地動説」が確立します。
「地動説」は、今の私たちが知っている宇宙のあり方を解明し、到達する大きな一歩となったのです。
コペルニクスに始まる発見は人類の宇宙観や世界観を一変させたので、「コペルニクス的転回」という言葉が生まれました。
地球は宇宙の中心ではないことを発見し、受け入れたとき、天文学は、そして科学は、大きく発展しました。これはあなたの人生やビジネスにおいても、まったく同じことが言えます。
「人のため」は人生・ビジネスを良い方向へ導く
あなたは、この世界の中心ではない──このことを受け入れたとき、初めて、あなたの人生やビジネスは、幸せになる方向へと動き出していくことでしょう。
それは、「自分中心」から「人のため」へのシフトです。現代でも、「相手の立場」に立って考えなさいとよく言われますね。でも、それほど難しいことって、実はないんです。
紛争を長年続けている国同士なんて、視点を変えることが双方にとって難しすぎて、議論も対話ももはや成り立たないわけでしょう。では、いったいどうすれば、相手の立場に立った「見方」へと変えられるのでしょうか?
私がたどり着いた結論は、考えを真逆にしてみること。
いくら頭でわかっていたとしても、人間は自分中心の「天動説」で見てしまうもの。それを承知のうえで、自分の考えを真逆にしてみると、正しくなることがよくあります。
平らに見えたこの地球は本当は丸いし、2万㎞先にいる人は、実は上下さかさまになっている。そういうものなのです。
自分が「正しい」と思うことは、たいてい「間違っている」。
自分が「間違っている」と思うことが、意外と「正しい」。
『サイゼリヤの法則 なぜ「自分中心」をやめると、ビジネスも人生もうまくいくのか?』(KADOKAWA)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします「自分の考え」にこだわりすぎないで、これくらい柔軟に構えておけばいいのです。すると、自分中心の殻から抜け出し、正しい方向へと進むことができます。
私自身もサイゼリヤの視察をしているとき、ふと「つくる側」「売る側」の立場で見ていることに気づきます。こんなに何度も「人のために」と、あちこちで言っているにもかかわらずです。
人間は不完全なのですから、そんなものです。そんな弱さも含めて、自分が大したことのない愚かな人間だと思っておきましょう。
そうすると自分の考えに固執しないですむので、「あ、自分中心になってしまっていた」とすぐに気づいて、「人のために」と切り替えていくこともできるのです。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。