特集は長く愛されてきた店の行く末です。長野県須坂市の複合施設「須坂ショッピングセンターパルム」がこの秋で閉鎖される方針が示されました。常連客の多いテナント飲食店の模索や決断を取材しました。
■オープンから55年 秋で閉鎖へ
行列ができるラーメン店。
唯一無二の味を求めて、連日、多くの客が足を運んでいます。
昭和の雰囲気を残す喫茶店。
メニューも味も昔ながらです。
これらの店が入っているのは須坂市の「須坂ショッピングセンターパルム」。
長野電鉄・須坂駅から200メートルほどの場所にあります。
この春、センターが閉鎖されるという情報がもたらされました。
市内から(70代):
「行くとこなくて弱っている。はっきり言ってこれからどうしたらいいかしら」
「ショックでしたね、今度はどこへ行ったらいいかと思って、こういう仲間づくりができるかどうかと」
10店舗ほどが営業する一方、シャッターを下ろしたままの区画が目立つセンター。
オープンから55年。大きな節目を迎えようとしています。
■ピーク時は40店舗
センターが完成したのは1969年・昭和44年です。地元の商店有志が協同組合を立ち上げて建設した複合施設で、通路のある1階に商店が並び、2階、3階は住居部分。
その後は増床してピーク時は40店舗が入る施設となりました。
1980年代になると、隣の長野市を含め大型店の影響を受けるようになり徐々に客足が減少します。
1991年、てこ入れのため通路の天井をガラスドームにして開放感のある造りにリニューアルしました。
「パルム」の愛称はこの時から。
当時の買い物客:
「きれいになりましたね、前よりも天井もきれいになったし、買い物もしやすくなるのではないですか」
「長野の街の方にお客さんが行ってしまうので、こういう感じになってくると地元の人もまた来てみたいなと思うんじゃないですか」
■シャッターを下ろす店が増え
しかし、その後、集客力のあったスーパーと衣料品店が相次いで撤退。テナント料の減少でこのころからパルムの運営が厳しくなりました。
次第にシャッターを下ろす店が増える中、2022年、消防設備の不備が見つかりました。
スプリンクラーが機能しないなど、設備が不十分と消防から指摘されたのです。
協同組合は「設備改修費の捻出が困難」として、組合員に土地・建物の売却を求め、今年の秋でパルムを閉鎖する方針を示しました。
■今後、人気ラーメン店は?
入店を待つ客が列を作る「ホームラン亭」。
昼は多くの客でにぎわいます。
一番人気は、豚骨と鶏ガラを炊いた濃厚なスープが特徴のしょう油味のラーメンです。
市内から:
「昔ながらの味で、全然変わらずおいしい。一度食べたら忘れられない味ですよね」
店主は3代目の鈴木孝太郎さん(51)です。
ホームラン亭 店主・鈴木孝太郎さん:
「コロナで(客が)だいぶ減り、結構持ち直してきたので、頑張ろうかなと思ったときにまた」
店は1948年・昭和23年に祖父が開業。1997年、2代目の母・いま子さんの時代に、空きがあったパルムに移転しました。
ホームラン亭 店主・鈴木孝太郎さん:
「(パルムなら)『1日500人は来るよ』と言われてきたので、全盛期から比べればだいぶ静かになっていたが、今と比べればだいぶ良かったですね」
パルムに店を構えて30年近く。なじみ客が大勢いますが、閉鎖の方針を受けて再び移転することを模索しています。
ホームラン亭 店主・鈴木孝太郎さん:
「しょうがないなというのは感じていましたし、いつかは出なくてはいけないと思いながらやっていたので、いろいろなところへ相談に行き、どう動こうか決めているところ。やっぱり須坂市内で、今と変わらないこの辺りで、何とかやれればなと」
常連客はー。
常連客:
「(パルムは)結構盛んなころもあった。そういう時代も知っているので非常に寂しい。ホームラン亭は移転するなりして、どこかでまたやってほしい」
■昭和の雰囲気を残す喫茶店は
「シャッター街」にたたずむ喫茶店。
階段を上ると、住民憩いの場「ニュースコー」です。
カウンター客:
「まんじゅうは出るわ、果物は出るわ、漬物は出るわで、きょう何食べたか、会計の時になると忘れちゃう」
「漬物もおいしいしね」
店主は2代目の山岸公子さん(75)。
20代後半から店で働き始め、初代店主から受け継ぎ45年にわたって店を守ってきました。
ニュースコ― 店主・山岸公子さん:
「(昔のにぎわいは)すごかったですよ、歩けないほど、パルムの中に店がみんな入っているから。(店は)学生さんがすごかった。学校帰りに『ただいま』みたいな感じで」
看板メニューは、山岸さん特製のナポリタンスパゲッティ。
太目の麺にケチャップの濃厚な味がなじんでいます。
価格はまだ「昭和」が続いているような安さです。
ナポリタンを食べた人:
「大変おいしかったです、味濃厚で、ケチャップの味が。太麺で違いますよね、ゆで方もちょうどいい」
山岸さんは自身の年齢も考えてパルムの閉鎖とともに店を閉めることにしています。
常連客:
「どうしようこれから先と思いましたね。ほかに全然ないですもんね、こういうような方の店はないですからね」
「いつまでも、こうやっておいてくださる喫茶店なんてないし、良い場所だったんだけど残念です。引き留めるわけにもいかないし」
ニュースコ― 店主・山岸公子さん:
「ちょうどいいのではないかと思っている。切ないけどね、これから移転してもと思うから、辞めるんだよとみんなに言っている。みんな喜んで来てくれるから、(閉店まで)一生懸命、健康第一にして頑張ろうと思う」
移転して営業継続を模索する店があれば、パルムと共にこの秋で閉じる店も。ただ、中には閉鎖の方針にまだ合意していない店もあるということです。
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