衝撃発言の主は自治体向けコンサル会社の社長だった。
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地方創生が叫ばれて10年。実現できたという自治体はそう多くない。では、政府が流し込んだ膨大な「地方創生マネー」はどこへ溶けていったのか。『週刊東洋経済』5月11日号の第1特集は「喰われる自治体」だ。※本記事は2024年5月7日8:00まで無料で全文をご覧いただけます。それ以降は有料会員限定となります。【配信予定】5月5日(日)Part1 地方創生の虚構
DMMが福島・国見町の事業で巨利を得るカラクリ
石破茂 「企業版ふるさと納税は見直すべきだ」
5月6日(月)
福岡・吉富町が地方創生コンサルに喰われたワケ
PwCやアクセンチュアが「地方創生」で狙う果実
5月7日(火)
<無料>アマゾン参入で「ふるさと納税」に起こる大変化
不誠実? ふるさと納税で儲ける代行業者の実態
トップは57%!「ふるさと納税依存率」全自治体順位
5月8日(水)
女性が犠牲となる地方創生「福井モデル」の限界
福井県初の女性副知事が“最も困っていること”
増田寛也 「人口の自然減対策は完全に失敗した」
1741自治体ランキング「ふるさと納税マイナス額」
5月9日(木)Part2 喰われないまちづくり
自治体ランキング「稼ぐ力が強い」トップ1000
北海道むかわ町がコンサル主導の計画に“待った”
大阪・大東市 “コンサルに頼らず地方創生”の秘訣
5月10日(金)
自治体ランキング「稼ぐ力が強い」ワースト1000
熊本・上天草市を復活させた赤字中小企業の確信
福島の被災自治体が“企業誘致に頼らない”真意
5月11日(土)
自治体ランキング 「子供が増える」トップ1000
北海道から九州まで地銀&信金「地方創生マップ」
木下斉 「自治体がコンサルに丸投げするのはNG」
5月12日(日)
自治体ランキング 「子供が増える」ワースト1000『週刊東洋経済 2024年5/11号(喰われる自治体)[雑誌]』(東洋経済新報社)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。定期購読の申し込みはこちら
自治体向けのコンサルティングを手がける会社社長が、社外で語った音声データがある。
「ちっちゃい自治体って(うちが)経営できるんですよ」
「財政力指数が0.5以下(の自治体)って、人もいない。ぶっちゃけバカです。そういうとき、うちは『第2役場』。行政の機能そのものを分捕っている」
声の主は、備蓄食品製造のワンテーブル(宮城県)の島田昌幸前社長。同社の主力事業は震災時に食するゼリーの製造販売だが、自治体向けコンサルにも手を広げている。過疎地の自治体に地方創生の手法を説いて回っていた。
音声データを提供したのは自治体向けにDXコンサルをする人物。「自治体を喰(く)い物にする、その考えが許せなかった」と憤る。自身も、島田氏に紹介した出資者がおり、その罪悪感から音声データの提供を決めた。
だが、音声データを公開した理由はそれだけではないという。
「島田氏のような考えで、自治体を喰い物にしているコンサルは山ほどいる。だから、警鐘を鳴らしたいと思った」のだという。
ワンテーブルの株主には、上場企業シップヘルスケアホールディングスや読売新聞社、内田洋行など有名企業が名を連ねる。島田氏が福島県国見町で携わっていた「くにみ学園基本構想策定委員」には、大手コンサルのデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーの人間も加わっていた。
総務省の肩書で接近
地方創生コンサルはどのようにビジネスを展開するのか。
島田氏は総務省所管の「地域力創造アドバイザー」に登録されていた。会話の中で島田氏はその肩書で自治体に接近していくことに意味があると語っている。
「ワンテーブルの島田じゃないんですよ。総務省の島田先生という形で派遣されているのがミソ」
「いろんなまちが、僕の言っていることに『そのとおりです。それ早くやりたいです』って」
「やりたいと言わせたら勝ち。あとは言うことを聞かせる」
今、多くの自治体が官民連携という形で民間企業と提携し、地方創生に関する助言、提案を受けている。その際、自治体職員を信用させ、提案を事業化させるためには国の肩書を使うことが有効だというのが話の骨子だ。
提案が事業化すると、彼らはどういう動きをするのか。
「2年ぐらいリードタイムがある。仕込みが。予算化のときに、島田先生はワンテーブルの島田になります。プロポーザルがあるので」
いざ、自治体が公募型プロポーザルで事業者を選定する段になると、彼らは一民間企業として入札に応募するというのだ。
島田氏はさらに、企業版ふるさと納税の“使い方”について詳しく語っている。この制度は、地方創生の財源不足に悩む自治体が使えるように国が創設した制度。寄付をした企業は寄付額の最大9割が税控除される。
「超絶いいマネロン」
企業版ふるさと納税を利用した島田氏のスキームは次のような形だと思われる。自らの提案を自治体に事業化させ、事業の原資は企業版ふるさと納税制度で調達。その際、寄付企業にもメリットになるように事業の受注もさせる──。
現に島田氏は会話の中でこう語る。「超絶いいマネーロンダリング。仕事にして返す。キックバックじゃない。業務にして返す」。
こうした手口、手法で行政機能を「分捕って」いった福島県国見町の実例を次の記事で詳報する。5月6日(月)配信予定の記事では福岡県吉富町に介入する地方創生コンサルを紹介する。ここに島田氏は絡んでいないが、手法は近い。島田氏が、地方創生コンサルの世界で決して特異なタイプではないことがわかる。
発言について、東洋経済は島田氏に直接話を聞いた。「録音されていると知らされていない状態だったとはいえ、発言が一部メディアで報じられたことで多くの方々にご迷惑をおかけした。発言は撤回したい」と釈明した。だが、「何が問題だと考えて撤回するのか」という質問には答えなかった。
膨張し続ける地方創生マネー
地方創生をめぐる「カネ」は膨張し続けている。そのきっかけとなったのが、2014年5月に増田寛也元総務相らによって公表されたリポートだ。このまま人口が減り続ければ、全国の半分の自治体が消滅する──。その衝撃的な内容はマスコミで大きく報じられた。当時の安倍政権が看板政策に掲げたのが地方創生だ。
政府は全国の自治体に、人口減の抑止に向けた地方版総合戦略を策定するよう要請。その際、策定費用として各市町村に1000万円ずつ予算措置をした。ところが自治体は、その予算を使って策定をコンサルに外注してしまう。
地方自治総合研究所が17年に実施した調査によると、実に77%超の自治体がコンサルに委託していた。それも、受注した企業の過半は東京に本社があった。地方創生マネーは東京のコンサル会社に還流していた。
画像を拡大(イラスト:奈良裕己)
自治体DX市場は1兆円に
その後も地方創生という名の交付金は自治体に配られ続けている。岸田政権が力を入れる「デジタル田園都市国家構想」も地方創生政策の1つ。自治体DX市場は25年度に1兆円に達する。16年に始まった企業版ふるさと納税の利用額は22年度、過去最高の341億円に達した。
市町村の「平成の大合併」以降、地方公務員の数は減らされてきたのに、ミッションは増えてゆく。
そんなとき、甘美な言葉で接近してくる人々がいる。どんな人々か、見極めが必要だ。
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