中国の2024年1~3月期の国内総生産(GDP)は実質ベースで前年同期比5.3%増加し、エコノミストの事前予想を上回る底堅さを示した。その一方、物価動向の指標であるGDP(国内総生産)デフレーターは4四半期連続でマイナスを記録。(マクロ経済への影響が大きい)不動産市況の悪化も底が見えない状況が続くなど、景気の先行きへの懸念材料も少なくない。
そんな中、4月18日に中国人民大学で開催された「中国宏観経済論壇(中国マクロエコノミーフォーラム)」で、複数の著名エコノミストが中国経済の現状に対する分析を披露した。
「1~3月期の経済動向を短い言葉でまとめれば、『幸先は良いが、不安もある』となるだろう」。JPモルガン・チェースで中国担当首席エコノミストを務める朱海斌氏は、フォーラムの席上でそう述べた。
底打ちの判断は時期尚早
「2024年のGDP成長率を5%前後とした中国政府の目標を達成する観点からは、1~3月期の成長率が(予想を上回る)5.3%を記録したのは好スタートだった。しかし、中国の不動産市場には強い下押し圧力が引き続きかかっており、市況がすでに底打ちして回復に向かっていると判断するのは時期尚早だ」(朱氏)
さらに朱氏は、複数の経済指標に関して3月単月の数字が2月より悪化したことに触れ、1~3月期の好調が持続可能かどうかは「今後の動きを見る必要がある」としたうえで、次のように指摘した。
「中国のGDPデフレーターは4四半期連続でマイナスであり、2024年4~6月期および7~9月期もマイナスが予想されている。このことは、中国経済の内需不足(によるデフレ)を反映している」
「1~3月期の実質GDP成長率が5.3%に達したのは、物価の下落に由来する要素もある。また、2024年はうるう年であるため、1~3月期の日数が2023年より1日多かった。そのことも(前年同期比の)GDP成長率に影響を与えた可能性がある」
フォーラムでそう指摘したのは、野村グループの中国担当首席エコノミストを務める陸挺氏だ。
不動産市況のさらなる悪化は中国経済の最大のリスク要因だ。写真は経営危機に陥っている不動産大手の碧桂園控股が分譲したマンション群(同社ウェブサイトより)中国経済の先行きに関してエコノミストたちに共通するのは、不動産市況のさらなる悪化を最大のリスク要因と見ている点だ。中国国家統計局のデータによれば、1~3月期の住宅販売面積および住宅の新規着工面積は、どちらも前年同期比20%を超える減少を記録した。
「不動産業界は負のスパイラルに陥っている。住宅価格が下がれば下がるほど、消費者の住宅購入意欲は低下する。消費者の住宅買い控えが続けば続くほど、不動産デベロッパーの資金繰りは悪化する。その結果、不動産デベロッパーは新規開発用の土地の購入資金が枯渇し、(土地利用権の売却収入に頼る)地方政府の財政悪化を招いている」(陸氏)
大規模な信用収縮リスクも
それだけではない。「不動産業界の流動性危機が金融市場全体に与える衝撃を軽視してはならない」。上海財経大学の学長を務める劉元春氏は、フォーラムでそう警鐘を鳴らした。
「中国の金融機関の融資は不動産担保が主流だ。(不動産相場の下落により)信用度の高い担保資産がなくなれば、(金融機関の貸し渋りにより)予想を超える規模のクレジットクランチ(信用収縮)が起きるかもしれない」(劉氏)
本記事は「財新」の提供記事です。この連載の一覧はこちらこうしたリスクが中国経済全体に及ぼす悪影響を緩和するため、野村グループの陸氏は次のような対策を提案した。
「中国政府は、不動産デベロッパーが予約販売した住宅の完成と引き渡しを(政府保証のつなぎ融資などを通じて)積極的に支援し、負のスパイラルの連鎖を抑止すべきだ。そうすることで、不動産市場に対する(消費者や金融機関の)信用が再構築され、政府に対する信頼が高まり、住宅関連の内需拡大にもつながる」
(財新記者:範浅蝉)
※原文の配信は4月19日
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