買った株などの運用資産をいつ売るべきか。カリスマ投資家が解説する。

(イラスト:奈良裕己)

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さくらインターネット株で400万円損した──。

日本政府の共通クラウド基盤に自社製品が採用され、冒頭のような見出しの記事が世に出るほど注目された、さくらインターネット。同社の株価は政府の発表をきっかけに急上昇した後、暴落した。筆者は上昇開始後に購入し、急騰中も何度か下落したがすぐには売らず、最終的に購入価格の6倍で利益確定(利食い)することができた。

この銘柄に限らず、買った株などの資産を「いつ売るか」は大きな悩みの1つだ。売り時を誤ると、得られたはずの利益を逃したり、逆に損失が膨らんだりしかねない。とくに最近のような上昇相場では、株価が少し上がったところで売ってしまい、その後のさらなる上昇の波に乗れず悔しい思いをする投資家が多い。

ここでは、損失を最小限に抑えつつ、利益をできる限り増やすための売り方を紹介する。

「そろそろ下がるだろう」

上昇相場で大きな利益を上げられないのは、「そろそろ下がるだろう」「いま売れば5%の利益を得られるが、持ち続けると株価が下がって利益が減るかも」などと考えてしまうから。そこで勧めたいのが、「株価が下落に転じたら売る」というシンプルな手法だ。

下図の株価チャートを見てほしい。

株価が赤い25日移動平均線を上回っている間は保有し続け、下回ったら売却する。筆者は基本的に、1〜2%ほど下回ったら売ることにしている。

ただし同図のように上昇トレンドが強い銘柄は、株価が25日線を下回ってもすぐに反発し、再び上回ってから上昇し続けることがよくある。そのような場合は1〜2%ではなく、例えば5%ほど下回ったら売るようにしてもよい。

個人投資家からは、「売った後はその銘柄の株価を見ない」という話をよく聞くが、一時的に25日線を割り込んだとしても、まだ天井には達していない可能性も大いにある。売却した後も株価の推移を確認し、再び25日線を超えたら買い直すことを検討すべきだ。

株価急騰局面のルール

持っている銘柄の株価が急上昇したらどうすべきか。「25日線ルール」にこだわりすぎると、利益を大きく減らすおそれがある。

例えば1000円で買った銘柄が3倍の3000円まで急騰し、25日線からの乖離率が50%に達しているような場合を想像してほしい。もし株価が3000円で天井を打って下落したら、25日線を下回るのは2000円近辺のため、3000円より1000円も安く売却することになってしまう。

これではもったいないので筆者は、株価が急騰した場合は25日線ルールに2つのルールを組み合わせることにしている。

1つ目は「5日線ルール」だ。短期間に大きく上昇している銘柄のチャートでは、25日線よりも高い位置に5日線がある。その5日線を株価が割り込んだところで売れば、25日線ルールで売るよりも高い株価で利益確定できる。

もう1つは「上昇途中ルール」。これは25日線だけでなく、5日線からの乖離率も30%超の局面で適用する。5日線を下回るのを待つと今よりもかなり低い株価で売ることになるのであれば、上昇途中でもその時点の株価で満足して売却してしまおう、という手法だ。

利益確定は非常に難しく、つねにベストなタイミングで売ることは不可能だ。自分自身が納得できるルールを事前に決めておき、それに従って淡々と売却したい。

最後に、相場の下落局面で重要な「損切り(ロスカット)」のポイントを覚えておこう。損切りとは、含み損がある状態で保有銘柄を売って損失を確定させることだ。適切に行うことで、資産の大幅な減少を回避できる。基本的な考え方は利益確定の手法と変わらない。

大損しないための4カ条

①ルールを決めてそれを守る。事前にルールをある程度決めておかないと、株価が急落したときにパニックに陥り、適切な判断ができなくなってしまう。筆者は原則として、株価が25日線を割り込んだら損切りするようにしている。

②ただしルールは必要に応じて柔軟に。「25日線を1円でも下回ったら必ず損切りする」と決めるのではなく、例えば「1〜2%ほど割り込んだら売却するが、マーケット全体が堅調で25日線が上向きの場合はマイナス5%程度までは売らずに様子を見る」といった形で臨機応変に対応したい。

③損切り後に株価が上がったら買い直す。損失を確定させるために売却しても、その後に株価が反発することは珍しくない。25日線を超えたところで買い直せば、損失の一部かすべてを取り返すことも可能となる。

④損切りしなかったらどうなったかを確認。損切り後も株価の推移を見続ければ、さらに下落した場合に、「もし売っていなかったらひどい損失になっていた」ことを確認できる。「大きく負けないためには損切りが重要だ」と腹落ちできるはずだ。

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