政府は、物価高への対応などを柱とする経済対策を閣議決定した。自民・公明・国民民主の3党合意を受け「103万円の壁」引き上げが明記されたほか、電気ガスやガソリン代の負担軽減や、住民税非課税世帯向けの3万円給付も盛り込まれた。

電気ガス代は1月に950円負担減

2024年8月に酷暑対策として復活し、10月で期限を迎えていた電気・ガス料金の補助は、2025年1月~3月に再び実施される。

標準家庭の場合(電気使用量は260kWh、ガスは30m3)、電気代は1~2月使用分で月650円、3月分で338円、ガス代は1~2月分で月300円、3月分で150円の負担軽減となる。

ガソリン補助金は規模を縮小して延長
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年内を期限としていたガソリン補助金は、規模を縮小して延長する。現在1リットルあたり175円程度に抑えている価格上限を、12月から2カ月かけて185円程度へと移行させる。

ガソリン税をめぐっては、今後議論が本格化する。現在、ガソリン税は、1リットルあたり53.8円で、本則税率分28.7円に、25.1円が上乗せされている。この上乗せ分については、ガソリン価格が高騰し3カ月連続で160円を超えると免除される「トリガー条項」があるが、東日本大震災の復興財源を確保するためとして、発動が凍結されている。

国民民主党の玉木代表

国民民主党は凍結解除や上乗せ分の廃止を訴えていて、経済対策ではガソリン税の扱いについて、自動車関連税制全体の見直しに向けて検討するとされた。

住民税非課税世帯に3万円+子ども1人2万円

物価高の影響を受けやすい低所得層に対する支援として打ち出されたのが、「住民税非課税世帯」への給付金だ。3万円を目安に支給され、子育て世帯には子ども1人当たり2万円が加算される。

「住民税非課税世帯」にあてはまるには、合計所得金額が一定水準を下回らなければならないなどの条件がある。住んでいる地域によって異なるが、東京・世田谷区や大阪市などでは、生活扶助を受けていたりひとり親だったりするケースを別にして、扶養家族などがいない場合は、年間の給与収入で100万円以下というのが基準だ。

扶養家族などがいる場合は、その人数によって、非課税世帯に該当する年収が変わってくる。たとえば、夫婦に、学生と幼い子どもがいる4人家族だと(配偶者と子どものパート・バイト収入はそれぞれ100万円以下を想定)、世帯主の給与年収が256万円未満だと、非課税世帯となる。

「住民税非課税世帯」には、これまでも低所得層向け給付金が支給されてきたが、さまざまな分野で優遇措置が設けられている。大学の授業料減免などの対象となり、子どもが0~2歳児だと保育料が無料になるほか、高額療養費制度で、70歳未満だと1か月の医療費の自己負担の上限が3万5400円に抑えられている。

非課税世帯のうち、世帯主が65歳以上の世帯は約75%に上る

厚生労働省の2023年国民生活基礎調査によると、住民税非課税世帯は全世帯のうち約27%を占めるが、低所得世帯でなくても物価高で生活は苦しいとの声があがっているほか、高齢者の場合、年金所得などが一定以下なら、それなりの金融資産を保有していても、住民税非課税世帯として行政上の恩恵を受けられるケースが多いと指摘する声もある。非課税世帯のうち、世帯主が30~39歳の世帯が占める割合は約3%なのに対し、65歳以上の世帯は約75%に上るなか、所得金額で判定する今のしくみは再考すべきだとの意見も出ている。

所得税がかかり始める「103万円の壁」をめぐり、週明け以降、引き上げ幅や扶養家族の扱いについて具体的な議論が進むことになるが、「住民税非課税世帯」の認定基準や対象のあり方についても、この先検討が必要になりそうだ。

金利上昇下での予算膨張

経済対策は、「日本経済・地方経済の成長」「物価高の克服」「国民の安心・安全の確保」を3本柱として打ち出し、補正予算で手当てする一般会計の歳出は13.9兆円と、前年度の対策を上回った。国・地方分と財政投融資を合わせた財政支出は21.9兆円、民間の支出を含めた事業規模は39.0兆円に上る。

日銀の利上げ局面入りで「金利のある世界」が再来し、国債の利払い費増による財政圧迫が懸念されるなか、コロナ禍以降膨らんできた歳出構造はさらに膨張する形となった。

物価高を克服する力強い成長をけん引できるのか、効果の検証が求められる。
(フジテレビ解説副委員長 智田裕一)

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