20日、自民、公明と国民民主は、週内に閣議決定する経済対策に、年収103万円の壁の引き上げを明記することで合意しました。
この年収「103万円の壁」の実態とは。
専門家の解説とともに県内の現状を取材しました。
「103万円の壁」について聞いたのは、ファイナンシャルプランナーの塩田耕栄さんです。
かごしまファイナンシャルプラザ
ファイナンシャルプランナー・塩田耕栄さん
「103万円の壁とは、所得税がかかってくる金額です」
そもそも、103万円とは税金の負担を軽くする基礎控除の48万円と、給与所得控除の55万円をあわせた金額です。
この103万円以下の年収だと所得税はかかりませんが、103万円を超えた場合は、超えた金額に対して所得税がかかるようになります。
たとえば年収が105万円の場合は、103万円を超えた2万円に所得税の5%分、つまり1000円がかかり手取りから引かれることになります。
これだけ聞くと、年収が103万円を超えてもあまり影響がないように見えますが、学生の子供がアルバイトをしている場合は、親にとって大きな壁となります。
その理由はー
「(学生は)特定扶養親族になる。103万以下であれば、親が63万円分課税所得から引けていたので税金を払わなくて済んでいた。103万を超えると、63万円分(親の)課税所得が増える。今までは払わなくても済んでいたものを払わないといけない」
子供の年収が103万円を超えると親の扶養から外れるため、親は63万円の控除を受けられなくなり、一気に親の税負担が増えてしまうのです。
学生個人で見た場合はそこまで影響はないものの、世帯全体で見た場合は103万円の壁を超えることで、大きく手取りが減ってしまいます。
ファイナンシャルプランナー・塩田耕栄さん
「(税負担は)10数万円。所得が高い人はさらに大きな負担が出てくる。学生がいる親は50代の人も多いので、ある程度年収がある中で63万円を引けるか、引けないかは大きい」
実際にアルバイトをする学生はどう感じているのか。
鹿児島市の居酒屋で働く、鹿児島大学2年の塩屋陽輝さんです。
1人暮らしをしながら、アルバイトを2つ掛け持ちして生活費をまかなっています。
鹿児島大学2年・塩屋陽輝さん(20)
「103万円を超えてしまうと親への負担がかかってしまうので、『絶対に超えられないな』と思っている。今は(103万円)ギリギリ」
塩屋さんはもっと稼ぎたいという気持ちはありながらも、平日は休んで、店が混雑する週末に働くなど、103万円を超えないようシフトを調整しているといいます。
塩屋さん
「9月くらいから計算し始めて2カ月くらい調整してちょっとずつ減らしながらバイト入っている」
「回数を増やしたりもっと働きたい気持ちはある」
同じ店で働く別の学生も同様に103万円の壁に悩んでいます。
鹿児島大学2年・佐藤優大さん(19)
「本当は週3、4回出られても週1回くらいにする時もある。103万円だとお金が足りない」
この店では学生のアルバイトが10人ほどいますが、ほとんどが103万円の壁を意識していて、店側も対応を迫られています。
八幡・小幡雅道代表
「暇になったらバイトには早めに上がってもらって。働きたいと言っている。日数を半分に削るとか。心苦しいし、バイトも離れる。やめるきっかけにもなる」
稼ぎたい学生だけでなく、人手を必要とする店側も悩ます年収103万円の壁。
塩田さんは「103万円の壁は30年ほど前にできた仕組みで今の時代にあっていない」として、時代に合わせた改善の必要性を訴えます。
ファイナンシャルプランナー・塩田耕栄さん
「トータル103万円は変わらない形できていて、何らかの形で改善していかないと多くの方が困る」
「頑張った人は頑張った形で順当に増えていく。どこかの段階でポンと下がってしまうと壁になる」
「自分の裁量、考え方で働くことが自由にできる、分かりやすい仕組みに変えてもらいたい」
壁の撤廃により減税につながるという試算も出ている中で、
国会では活発な議論を行い、我々が暮らしやすい仕組み作りを目指してほしいと思います。
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