起業して7期目を迎えた今年、私は事業パートナー(デザイナー)である大坪育美さんと大きな挑戦を始めました。縫製工房「MAARU FACTORY(マールファクトリー)」の立ち上げです。「アパレル業界の課題である大量生産・大量消費からの脱却、地域資源の活用、縫製技術の継承で地域循環型のモデルを作りたい」と、意気投合したことがきっかけでした。
実際に、自社商品を縫製してもらいたくても、納期が読めないほど県内縫製工場はどこも忙しく、背景には縫製職人の高齢化や人手不足がありました。
「技術者が足りないのなら、育てよう」-。気が遠くなるような事業採算性を度外視した試みですが、この技術者育成の仕組みがシングルマザーのリキャリア支援になるとの考えがありました。
ヒントはずっと付き合いのある縫製技術者であるシングルマザーの存在。業界20年以上のベテランで、自分の技術を生かし、想像以上の稼ぎを得ていました。何より部活動やPTA、子どもとの時間を大事にする「子どもファースト」の生き方がとても格好良かったのです。だから彼女はいつも前向きで輝いています。
この仕事は、学歴も仕事のキャリアも関係ありません。今、ここから技術を学び、経験を積み、稼ぎにする。定年は自分で決める仕事です。
沖縄の母子世帯の約半数が非正規雇用、77%が年収300万円未満(2023年度県ひとり親世帯実態調査)と貧困課題が顕著ですが、私は就労自立が大きな鍵になると考えています。
縫製業界の人手不足とシングルマザーのリキャリア支援。技術指導・就労先をつなげることで、産業課題と社会課題の両方にアプローチする仕組みがこの工房の特徴の一つです。
技術を身につけようと一生懸命働くスタッフや自社の縫製スクールに通うシングルマザーは皆、自分の人生を豊かにしようと、その背中は頼もしく輝いています。「地域の人が主役になるものづくり」。私たちが目指すスタイルです。
(アイランドワークス代表)
次回は新垣裕一氏(デジタルはるさー協同組合代表理事)です。
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