日銀は26日、追加の利上げについて見送る方針を決めました。これに市場が反応し、為替は1ドル=156円台に乗り、円安が加速しました。

■注目の日銀判断は“現状維持”

また一段と進んだ円安。その引き金を引いたのは、日銀の追加利上げ見送りという判断です。歴史的円安に対して何らかの措置を取るのか注目されたものの、結果は現状維持でした。植田総裁は1つの原則を示しました。

日銀 植田和男総裁(今月26日)
「まず金融政策は、為替レートを直接コントロールの対象とするものではありません」

ドル円相場はこの3年余りで50円以上円安になりました。きっかけはアメリカの利上げです。マイナス金利を維持する日本との金利差から急激に円安へ振れます。その後、日本は為替介入という“伝家の宝刀”を抜き、一時的に円高に進んだものの、金利差は縮まないまま。再び円安が進行しました。そして先月、日銀は17年ぶりの利上げに踏み切ります。円安に歯止めがかかるかと思いきや…。

日銀 植田和男総裁(先月19日)
「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えています」

この発言を受け円安が進み、ドルは150円台に突入。それでも植田総裁は先月と同じ発言を繰り返しました。

日銀 植田和男総裁(今月26日)
「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えています」

日銀は今の円安状況をどう見ているのか。

日銀 植田和男総裁
「(Q.今回、金融政策の変更がなかったのは円安の進行が無視できる影響だという、そういう範疇(はんちゅう)になるという認識か)とりあえず(円安による)基調的な物価上昇率への大きな影響はないと、皆さん判断したということになるかと思います。ただ、影響が今後発生するリスクはゼロではないので、注意して見ていきたいということでございます」

こうした発言で円安はさらに進行しました。なぜ利上げは見送られたのか。専門家は…。

外為どっとコム総研 神田卓也調査部長
「円安も国民の生活にとってマイナスの面が大きいんですけど、金利が上がることもマイナス面が大きい。どちらを今とるべきかということ。金融政策をひきしめていく段階ではまだないという判断なんだろうと」

■電気・ガス代 約3万円負担増

このまま円安が進めば、輸入製品に頼る日本はさらなる物価高騰という事態になりかねません。6月からは電気とガスの料金が上がることがすでに決まっています。ロシアによるウクライナ侵攻で燃料価格が高騰したことを受け、去年から導入されていた補助金が来月で打ち切られます。

齋藤健経産大臣
「電気ガスにつきましては、LNGや石炭の輸入価格、これらがロシアのウクライナ侵略前と同程度に低下をしてきた」

標準世帯の場合、6月以降は今月に比べ電気料金は1400円、ガスは450円上がることになります。さらに、再生可能エネルギー普及のため今月から電気料金に上乗せされた分も加えると、今年度は前年度に比べ2万9437円の負担増です。

主婦(20代)
「赤ちゃんがいるので夏は絶対クーラーをつけないと。考えたところで使わざるをえないかな」
個人事業主(40代)
「3万くらい上がるとなると、生活の方でもかなり負担が出ちゃうので。もうちょっと考えてほしいなと思いますけどね」

毎年のように猛暑が続く時代。エアコンは不可欠です。高齢者が暮らす介護施設では尚のこと命に関わります。東京・文京区にある『杜の癒しハウス文京関口』には56人が暮らしています。

三幸福祉会 柳沼亮一法人本部長
「フロアとか全部。廊下も居室ありますので、全部で100台弱くらいの空調がありますね」

個室ではエアコンをつけない人もいるため、1時間に1回見回って確認しているといいます。1番暑い8月の電気料金は120万円近く。運営する7つの施設を合わせると年間1億円に上ります。

三幸福祉会 柳沼亮一法人本部長
「どうしても削るということが空調はできないので。上がったままどうにか節約という話になっても、なかなか難しい現状になります。物価自体がどんどん上がっているので、そこで電気代もとなると、正直我々としては苦しい状態になるというのが実感です」

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