もみ殻生まれの新素材、作ったのはアパレルのイメージがない企業です。
バボちゃんのかわいらしいプリントが施されたTシャツ。
これに使われている生地をピンク色の特殊な液体に浸してかき混ぜると、液体が透明に。
実はこの素材、開発したのはアパレルとは縁がないように思える世界的企業。
常識破りの挑戦の陰には、地球環境に向き合う真摯（しんし）な思いがありました。
東京・港区にあるソニーグループ本社。
エレクトロニクス事業をはじめとする幅広い事業を展開し、さまざまな製品やサービスを手がけていますが、今、注目されているのが、「トリポーラス」という黒い粉のような新素材です。
ソニー知的財産サービス・田畑誠一郎工学博士：
（弊社は）バイオマス、植物の生物資源を使ったさまざまな機能材料開発を以前より進めていて、最初は（リチウムイオン）電池の用途を目指して開発を進めていたんですけど、残念ながら電池への採用はかなわなかった。従来の材料とは異なる物質の吸着特性があるというのを見つけまして。
トリポーラスの原料は、お米の栽培時に出る“もみ殻”。
もみ殻は、世界で年間1億トン以上も排出されていますが、そのほとんどが焼却処分に。
新たな活用方法を模索していく中でたどり着いたのが、もみ殻を加工してできたトリポーラスの特殊な構造でした。
従来の活性炭は均一な大きさの穴しかなく、特定の大きさの物質しか吸着できませんでしたが、トリポーラスは3種類の異なる大きさの穴があるため、におい物質をはじめ、これまで吸着しづらかったタンパク質やウイルスなどの汚染物質も除去することができるといいます。
アンモニアをピンク色の指示薬で染めた液体に、トリポーラスを使った素材と従来の消臭素材を入れてかき混ぜると、従来の素材はわずかに色が薄まっていますが、トリポーラス素材の方は透明に。
アンモニアを素早く吸着し、長時間消臭。
しかも、洗えば機能は元通りになるといいます。
ミツヤコーポレーション・鈴木利正社長：
（ソニーから）何かに使えないかというような話を聞いて、いろいろな実験で調べていくと、消臭スピードが早いとか、消臭の容量が大きい。さらに調べてみると、抗菌力もありまして、サステナブルにも貢献できるというのが皆さんに興味を示していただいています。
トリポーラスを生地にすることで生まれた、さまざまなアパレル商品。
シャツやインナーなどの他、ジャケットの裏側の生地にトリポーラス素材が使われていたり、フジテレビスポーツ中継のスタッフウェアとして使われたこともあります。
大手スポーツ用品メーカー・デサントのゴルフウェアや、株式会社イッセイミヤケの服作りにも使用されるなど、認知度も広がり始めています。
さらに、一部の河川や水道水で検出されているPFAS（=有機フッ素化合物）の除去にも効果があるとされ、トリポーラスが使われた浄化装置は自治体への導入に向けて実証実験が進んでいます。
ソニー知的財産サービス・田畑誠一郎工学博士：
弊社は早い時期から循環型社会の貢献とか、地球環境、温暖化対策という観点からも技術開発を進めていて、トリポーラスできれいな地球を維持していくことに貢献できればと考えています。
社会貢献への思いから生まれた新素材。
奇麗な地球の維持へ、挑戦はこれからも続きます。
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