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 三井住友銀行が2025年4月の新入社員向けに新設した採用枠「グローバルバンキングコース」が話題になっている。採用の時点で「海外勤務」を確約するもので、最速2年目でニューヨークやロンドンでの勤務が可能となる。学生にとっては部署がどこになるかわからない“配属ガチャ”の心配も無用だ。

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 人材獲得競争が激化する中、最近では、インフルエンサー採用や、実技試験のみ、面接のみ採用、新卒で年収1000万円など、企業もあの手この手でパイを奪い合っている。選ばれる会社になるにはどうすべきなのか、また選ぶべきキャリアは。『ABEMA Prime』で現状と課題を議論した。

■海外確約のメリット・デメリット

 企業採用コンサルタントのただの元人事氏は、海外勤務確約について「高学歴枠でも海外に行けない方はもちろんいるので、学生からしたらすごくメリットがあると思う」とコメント。一方、企業側にとっては「面接で優秀で、内定者の時にとんでもない化け物集団だと思ったけど、働き出したらポンコツということはよくある。その人が海外確約だと、例えば同期のモチベーションは下がるし、その人を海外に送ること自体のデメリットのほうが大きいのでは」と指摘する。

 一方、リザプロ社長の孫辰洋氏は、英語力テスト「TOEFL」105点以上が望ましいとされている点に注目。「大学3年生の就活時の105点というのは、東大・早慶レベルでもそれなりに海外経験があって勉強している人でないと取れない。そこでスクリーニングをかけているのと、105点以上の人は応募したくなるという心理をついている。企業には(人が集まる)メリットがあるのではないか」とした。

 では、希望どおり海外勤務に就けた人たちは、会社に残ってくれるのか。月額固定の採用代行サービスを提供する「マルゴト」代表の今啓亮氏は「おそらく今回の採用例で、海外から日本に帰ってきて、他社に行く時に年収が上がるかというと、大きな評価ポイントではないと思う。僕はカンボジアから帰ってきて一度は転職活動をしたが、その経験がはまる求人はなかった。日本に帰ってきても、そのまま続けられる方が多いのではないか」と推察する。

 ただの元人事氏は「残る人も入れば辞める人もいる」「銀行という組織がそもそも合わずに辞めていく人はいる」と、一歩引いた目で見ている。「海外に行ったことでその人の選択肢は増え、銀行以外の会社に行くことができるし、戻ることもできる。海外に行けば行くほど手札が増えるから、辞める人が一定数いるのは仕方がない。それを織り込み済みで、大量採用しているのが銀行だ。ちょっとイベント的にやって認知度を上げて、今まで引っかからなかった学生にリーチして、その人達が5%でも10%でも残ってくれたらラッキーだよね、という確率論の話だと思った」。

■“配属ガチャなし”は良いことばかり?

 “配属ガチャ”について、SNS上には「専門職でもないのに不満言ってるのは甘えだ」「新卒での最初の配属に感謝しています」「希望先に行けなかったのは理由があるのよ」などの声がある。配属ガチャがない会社に入ることは良いことなのか。

 金融アナリストで名古屋商科大学大学院教授の大槻奈那氏は、「どちらにしろ新卒なので、入ってすぐ仕事ができるということはない。そもそも外資だとジョブディスクリプションで、“あなたはこういうことが求められている”と決まっている。そう考えると、配属ガチャがないのはお互いにとっていいことではないか」との見方を示す。

 ただの元人事氏は「学生からしたらありがたいことだし、プラスだと思う」とする一方で、「銀行業務の基本のキとして、支店・法人があり、融資、預金為替などがある。もし僕が2年目にアメリカ確約だったら、これらの業務に対して熱量を持てないと思う」と懸念。

 今氏は「会社が大きければ大きいほど部署が多いので、配属ガチャは絶対にある。向き不向きも入ってみないとわからない。ただ、入るところは本人が選べるので、会社ガチャはない。“自分が入りたい会社を選び、その中ではどの配属でもいい”というのが、キャリアとして正しいのではないか」との考えを述べた。

■人材争奪戦 大企業は“厚待遇”?中小企業は“ホワイト戦略”?

 人材争奪戦が起こる中、大企業は初任給を引き上げたり、福利厚生を充実させるなど、待遇面を厚くしている。一方、中小企業は週休2日を2.5日にしたり、残業ゼロや男性育休取得率100%、その他ユニークな休暇で“ホワイト戦略”をとるところも見られている。

 ただの元人事氏は「そもそも給料や福利厚生で選ぶ人は、他にもっと良い条件があればそっちに行くだろう。やはり入社した後に業務は楽しいか、楽しくなくても仕事にポジティブなものを感じられないと、意味がないと思う」と指摘する。

 今氏は「中小企業は給料のテーブルには乗っていけない。別の戦略をとるしかない」とした上で、「例えば週休2.5日にしたら0.5日分がマイナスになるが、それよりも人が来ないことのマイナスのほうが大きい。うちは小さい会社だがフルリモートで、年間1万人以上の応募が3年続き、190人ほどに成長している。そういうニーズはやはりある」と紹介する。

 また、「今の仕事が選べる環境は、生活を犠牲にしたくないということ」「企業のほうがある種立場が低いことを受け入れていかなければならない」としながらも、「うちが譲っているのはフルリモートだけで、朝9時から6時まで勤務や、副業禁止、“どんどん出世してください”というところはがっちりやっている。全部が緩いわけではなく、その会社で妥協できるポイントがある」とした。(『ABEMA Prime』より)

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