4月13日で開幕まで1年となる大阪・関西万博。161の国と地域が出展する「パビリオン」は、‟万博の華”とも言われます。開幕に向けて続々と工事が始まっています。
中国パビリオンの起工式では「礎石」の前で記念撮影したり、カナダは特産のメープルシロップ入りのウイスキーで乾杯したりと、成功に向けて各国の気合の入り具合がうかがえます。
ただ、全ての国が順調なわけではありません。当初、独自でパビリオンを建てる予定だった国は60か国あったものの、このうち8か国が万博自体への参加を見送ったり、パビリオンを独自で建てることを断念したりしています。自国で起きた大規模な災害への対応に追われていることや、日本での建設手続きが複雑でスケジュールが間に合わないと判断したからだといいます。
イスラエルも独自でパビリオンを建てることを断念した国の1つです。駐日大使は、イスラム組織・ハマスとの戦闘が続いていることを理由に挙げました。
(イスラエル ギラッド・コーヘン駐日大使)「主に戦争のための予算の制約で、タイプCへの変更を余儀なくされました」
コーヘン大使によりますと、パビリオンではイスラエルの農業技術などを展示する予定だといいます。
(ギラッド・コーヘン駐日大使)「私は万博開催までに戦争がなくなり、人質が安全に帰国できることを願っています。イスラエルパビリオンが誰にとっても非常に魅力的なものにできると信じています」
各国が抱える課題も垣間見えるなか、この万博にひときわ強い思いを持って参加する国がオランダです。今年3月5日、盛大なレセプションを開いて工事のスタートを祝いました。パビリオンのテーマは『コモングラウンド(共創の礎)』。温暖化や食糧問題など地球規模の課題に対し、様々な国や文化に共通する”何か”をみんなで見つけようという思いが込められていて、水から水素を取り出して再生可能なエネルギーを作り出す技術を紹介する予定だといいます。在大阪オランダ王国総領事館のマーク・カウパース総領事は次のように話します。
(マーク・カウパース総領事)「私たちは年々、地球の資源を使い果たす『アース・オーバー・シュート・デー』が早まっていると気づいています。だからこそ私たちは使うもの全てに対して、異なるアプローチをとる必要があります。そう考えると人生設計や未来社会も変えていくべきなのです」
オランダの考える”異なるアプローチ”とは「循環型経済」。同じ資源を繰り返し使うことを意味しています。最近よく耳にする「サステナブル」は、資源を効率よく使うことであり、別物と捉えるのです。パビリオンの設計を担当したオランダの建築家トーマス・ラウさんは、パビリオンでは「循環型経済」を踏まえた“ある取り組み”をすると話します。
(オランダパビリオンを設計 トーマス・ラウさん)「私たちは建物内にどんな資材があるかを正確に把握して登録します。『マテリアル・パスポート』と呼んでいます。皆さんがパスポートを持っているように」
資材や材料の性質や使い道を全てシステム上で管理することで、万博が終わった後にパビリオンを解体しても、全ての資材が再利用できるといいます。
(トーマス・ラウさん)「願わくば日本がこのプラットフォームを取り入れて、将来的に日本に今どんな資材があるのかを正確に把握できるようになってほしい」
3月18日、オランダパビリオンの工事が本格的に始まりました。大型クレーン車や発電機などが次々と敷地へ運び込まれます。この日は基礎を打つ準備段階として、地盤が崩れないようにする工事が行われ、職人らが方向を細かくチェックしながら、鉄骨をどんどん埋めていきます。施工するのは大阪の中堅ゼネコン。”何でも再利用する”というオランダの考え方をどう受けとめているのでしょうか。
(淺沼組 オランダパビリオン新築工事 山下哲一所長)「率直に、聞いた時は驚きました。正直言って1回つくってつぶした方が早いイメージもあるんですが、循環型社会の考え方のうえで1つ1つ丁寧にばらせるようにつくっていく、これもまた我々の使命かと思っていますので、できる限り期待に応えたいと思います」
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