衆議院で与党が過半数を割り込んだことを受けて、国民民主党が実現を迫る、いわゆる「103万円の壁」に注目が集まっています。見直しのメリットとデメリットを専門家に聞きました。

■「103万円の壁」見直しの功罪

 自民・公明・国民民主の3党で協議することが決まった、いわゆる「103万円の壁」の見直し。

 国民民主党は、所得税の課税最低限を年103万円から178万円に引き上げるよう求めていて、実現すれば、年収200万円の場合、8万6000円、年収800万円の場合、22万8000円が減税となり、手取りが増えるということです。

国民民主党 玉木代表
「10月までで103万円に到達して、11月12月のシフトは入れないと、もう困っているんだという学生と。雇う側の店長も忘年会で忙しいのに全く人が雇えないと。もう本当に困ってますから」

 確かに学生の場合、103万円を引き上げることで「働き控え」を心配する必要がなくなりますが、パートやアルバイトで働く扶養されている主婦の場合、実は今のままでも103万円を気にして「働き控え」する必要はほとんどないと、ファイナンシャルプランナーの小野原薫さんは話します。

ファイナンシャルアカデミー 小野原薫認定講師
「配偶者特別控除というのがありますし、別に103万円にこだわる必要はないというのが、今現状ではあるんですけれども、世の中的には103万円という数字が昔からずっと続いている金額なので、その金額が怖くなっちゃって、103万円以上稼いだら損をするみたいな、ざっくりとした印象でいる人はすごく多いとみています」

 扶養されている主婦の場合、年収が103万円を超えても150万円までは「配偶者特別控除」が満額で受けられるように制度が変更され、夫の所得税も増えないということです。

小野原認定講師
「103万円の壁をすごく意識して生活されている、収入調整されている人もいると思うんですけど、2018年の配偶者特別控除の見直しがあって拡大されたことで、103万円の壁は壁じゃなくなってきているというのが現状かなと。控除の幅が広がるのは、手取りを増やすうえでもすごく大事だと思うので、そこに関しては上がっていくのは適切かなと思います」

 年収の壁で手取りが減る問題は、実は「税金」と「社会保険料」の2つの側面があります。

 103万円の壁は、税金からみた場合ですが、社会保険料からみた場合、さらに別の壁があるのです。

小野原認定講師
「『106万円』と『130万円』の2つあって、(夫が)勤めている会社の従業員数によります。51人以上だったら106万円、50人以下だったら130万円以上で社会保険料の支払いが必要になってきます。もう少し細かい条件はありますけど、ざっくりそんな感じです」

 パートやアルバイトで働く主婦の場合、年収が106万円もしくは130万円を超えた場合、社会保険への加入義務を負うことになり、社会保険料の負担が発生するということです。

大和総研 金融調査部 是枝俊悟主任研究員
「夫の社会保険の扶養でいられなくなり、自分で国民年金保険料や国民健康保険料を支払う必要が生じ、世帯収入が大幅に減ると、手取り収入が大幅に減るという問題が起きてしまいます」

 ただ、社会保険に加入することで将来的に恩恵が受けられるメリットもあります。

 103万円の壁を見直すだけでいいのか。大和総研の是枝俊悟さんは包括的な議論の必要があるとみています。

是枝主任研究員
「税制上の103万円の基準を引き上げることによって『働き控え』が解消される可能性はあるものの、そのすぐ先に『106万円』『130万円』の社会保険の加入というハードルが待っているので、税制だけの見直しで働き方が大きく変わるかというと、あまりその効果は得られないのではないか」

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