観光地で案内をしながら、思い出作りも担ってくれる人力車。
しかし、コロナ禍をきっかけに人力車業界では“ある変化”が起きていました。

観光客のにぎわいに包まれる下町風情あふれる街並み。
東京の人気観光地の一つ、浅草の街を駆け巡るのは人力車を引く「俥夫」たちです。

しかし、そんな浅草もコロナ禍では外出自粛によって、にぎわいを失っていました。

ライズアップ 東京力車の西尾竜太代表取締役は「もうコロナの時、本当“観光客がいない”。雷門前に立って浅草寺が見えることがもう異常。普段は絶対観光客で見えない」と振り返ります。

そこで、復活の一助を担ったのがSNS発信でした。

コロナ禍をきっかけにSNSを使って、浅草や俥夫の魅力を発信し、SNSを通して訪れた観光客の利用が、コロナ禍以前より増えたといいます。

SNS効果はそれ以外にもありました。

「女性俥夫について紹介していたりというので、すごく印象的に残っていて安心したので、この会社を選んだ」と話すのは、東京力車の女性俥夫(入社歴1年半)。

インスタグラムやTikTokなどから、“女性でもできる”という認知が広がり、この企業では女性俥夫の希望者が年間2人程度から約60人(約30倍)に増加し、俥夫全体の希望者も、月5人程度から約50人(約10倍)に増え、離職率も低下したといいます。

SNSを始めるにあたって社内制度も改善し、SNS投稿に向けて社内ミーティングや編集を積極的に行う社員にはSNS手当を支給しました。

東京力車の俥夫(入社歴11年)は「SNS編集とかさせていただいて、実際、僕も(手当を)いただいているが、(俥夫とSNS活動を)両方体験できるというのは経験としてもいいし、(俥夫みんなの)新しいことの発見もある」と話しました。

また、俥夫たちに深く浅草を知ってもらうための「浅草探求手当」も行っています。

浅草内の食事所での費用を会社が補てんするだけでなく、定期的に浅草知識テストを行い、合格者への手当も実施しています。

東京力車の俥夫(入社歴2年)は「自分たちで浅草の街中をすごく回ったりとかして勉強はするが、その時に浅草探求手当があるからこそ、気軽に(浅草のお店に)に行けるし、自分の勉強意欲も湧く」といいます。

他にも、俥夫が無料で参加できる外国語講座や、髪色・ネイルに一切制限を設けないファッションの自由化も行っています。

こうした“Z世代に刺さる社内制度”が、利用客とのスムーズな交流やサービスの向上にもつながっているといいます。

西尾代表取締役は「SNSがなかったら(魅力)発信の仕方が現場で、お客さん1対1で会った人たちだけなので、(知ってる俥夫が)SNS出てると、ちょっと見ちゃったりする。そういう方たちが、またここに来るために『頑張って仕事して頑張っていろんなことをやってきました』と言ってくれると、その人の目標になったのかなって思うと、やってて良かったなと思う。そのZ世代という感覚に合わせて、僕らも制度を変えていかないと、多分なくなっていっちゃうんじゃないかなと」と話しました。

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