ドル円相場は10月入り後から、ドルが騰勢を強める展開に。市場予想を上回る米経済指標が相次いだことや、米大統領選挙後の財政拡大を見据えて、インフレが再燃するとの見方が強まったことが主因だ。さらに、トランプ氏が優勢と報じられると、財政悪化への思惑が一段と強まったことで、タームプレミアムが上昇し、米長期金利を押し上げた。

米大統領選でトランプ氏が再選された場合、経済政策を巡る思惑から大幅な円安が進行する可能性がある。トランプ氏は大規模減税や関税引き上げを公約に掲げており、インフレの再燃や財政赤字の拡大を招く可能性も。米超党派組織「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」によると、トランプ氏が掲げる財政政策で財政支出は今後10 年間で10.2 兆ドル増加するとの試算だ。これはハリス氏の7.3 兆ドルを大幅に上回る規模。トランプ政策によるインフレの再燃は、利上げを通じて長期金利を一段と押し上げる可能性がある。さらに財政悪化への懸念が一段と高まる場合、タームプレミアムも上昇する。仮に米長期金利が5%まで上昇した場合、米日金利差の拡大で年央につけた34 年ぶりの円安値を超え、165 円を上回る円安が進行する可能性も。

過去の大統領選後の動きをみても、選挙後に円安が進行する傾向がみられる。選挙後に新政権による経済政策への期待が高まりやすいことが一因だ。

(※情報提供、記事執筆:日本総合研究所 調査部 研究員 吉田剛士)

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