発がん性が懸念される有機フッ素化合物=PFASが相次いで検出されています。日本水道協会の検査で基準値を超える値が出たことから、環境省は水道水の水質基準の引き上げを検討することになりました。この問題の現場と対策を取材しました。

■発がん性懸念のPFAS 検出相次ぐ

 私たちの生活に欠かせない飲料水。その安全性が揺らぐ問題が今、各地で相次いでいます。

 静岡市で暮らす75歳の男性。

住民(75)
「突然わいた。健康被害が一番心配だった。今まで、そういうことがなかったから」

 健康被害を心配するわけは自宅で長年使ってきた井戸水にありました。

住民
「『飲料水として使用しないように』と市から指導があったので守っている」

 井戸水のポンプに設置された静岡市の看板には「飲み水には使用できない」との警告が。一体、なぜ…。

 PFASとは「有機フッ素化合物」の総称のこと。発がん性が指摘されている物質も含まれています。

 この「PFAS」は私たちの身近なところで使われています。

 例えば炊飯器やフライパンのフッ素加工剤として、靴や衣類の撥水(はっすい)加工剤にも、ピザやハンバーガーの箱や包装用紙に含まれるケースも。

 今月、東京都の発表では、在日アメリカ軍の横田基地で「PFAS」を含んだ泡消火剤が雨水とともに排水溝に流れて施設外に出た可能性が高いことが明らかになりました。

■井戸水でも…静岡市で基準値超え

 世界的な人気を誇る景勝地「三保松原」で知られる静岡市清水区でも去年、市の調査で国の暫定基準値を大幅に超える「PFAS」が観測され、問題となっています。

住民
「困ります。本当に困ります」
「怖いよね」
「怖い。うちも井戸があるので」
「あるの?」

 PFASの発生源について静岡市の難波市長は…。

静岡市 難波喬司市長
「ある工場が、かつてPFASを使っていた。その工場の周辺から高濃度のPFASが観測されたので問題に。全く予想していなかったが、市の排水ポンプ場が工場のすぐ隣にあるが、そこから基準値の200倍を超える濃度が出てきた。これはもう大変だと」

 「市の排水ポンプ場」で観測されたのは暫定基準値の200倍を超える「PFAS」です。

 さらに、井戸水や用水路からも「PFAS」が観測され、市は井戸水を飲まないよう注意を呼び掛けています。

住民
「コーヒーをいれるのに、この井戸水を使っていた」

 自宅の井戸水の調査を依頼すると、基準の6倍ほどの「PFAS」が観測されたといいます。

■発がん性懸念のPFAS 除去へ実験

 生活に影響が出るなか、「PFAS」を取り除く対策として期待されているのが「泡」です。

ウォーターアリンテック 大上諒取締役
「ここでは水中に含まれているPFASを、泡の力を使って付着させて浮き上がらせる装置」

 静岡市と山梨県の企業が連携し、「PFAS」を9割以上、取り除く実験に成功。

 「PFAS」を含む水に微細な泡を作り、薬剤で「PFAS」を吸着させることで除去できるといいます。

大上諒取締役
「今、泡に付着してきたPFASが水面に浮いてきている。これをかき寄せ機を通して、この泡を回収していく」

 今後は、取り除いた「PFAS」を無害化する技術の実証実験を静岡市と進める方針です。

難波喬司市長
「PFASは日本も各地で困っているが、世界中が困っている問題。静岡市で開発をして世界に貢献したい」

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