首相の在任期間と日経平均株価の関係について、岸田文雄前首相のケースを踏まえ検証します。なお、日経平均株価の算出開始が1950年9月7日(1949年5月16日まで遡及計算)であるため、首相については、吉田茂氏(在任期間は1948年10月15日から1954年12月10日まで)の次の首相である鳩山一郎氏からとします。
日経平均については、首相の就任日と退任日の終値を用いて騰落率を計算しますが、就任日と退任日が営業日でなかった場合は、前営業日の終値を用いることとします。以上より、歴代首相の在任期間と、その期間における日経平均株価の騰落率をまとめたものが図表1となります。両者の間には、何かしらの関係が存在するのか否か、以下、詳しく検証していきます。
岸田前首相のケースを加えても、在任期間が長いほど日経平均は上昇しやすい傾向がうかがえる
在任期間の長かった上位10名(岸田前首相はここに入ります)をみると、在任期間は平均で1,599.8日、日経平均株価の騰落率は平均で68.1%の上昇でした。同様に、中位11名では、平均在任期間が628.1日、平均騰落率は14.2%の上昇となり、下位10名では、平均在任期間が258.7日、平均騰落率は4.7%の下落となりました。ここから、前回の分析結果と同様、在任期間が長いほど、日経平均株価は上昇しやすい傾向がうかがえます。
また、在任期間を横軸、日経平均株価の騰落率を縦軸に取って、分布図を作成したものが図表2です。データにややバラツキはみられるものの、右肩上がりの分布となっており、やはり、在任期間が長いほど、日経平均株価は上昇しやすい傾向が示唆されています。なお、在任期間と日経平均株価の騰落率について、相関係数を計算すると0.75となり、一般に強い相関関係があると解釈されます。
在任期間との関係は1つの目安だが日経平均の今後をみる上でまず衆議院選挙の結果に注目
再び図表1に目を向けると、岸田前首相の在任期間は1,094日と、本レポートの分類では歴代第7位となり、日経平均の騰落率は35.9%の上昇と、こちらも歴代第7位でした。また、歴代首相のうち、在任期間が1,000日を超えた首相は7名ですが、それぞれ在任期間中の日経平均はすべて上昇していることが分かります。分析データ数が31と少ないため、あくまで1つの目安ではありますが、「長期安定政権は株高要因」と考えられます。
足元では、今回の衆議院選挙で与党の議席数は過半数を割り込むとの報道もあり、仮に2025年夏の参議院選挙前に石破首相退陣となれば、在任期間は1年未満となります。一方、衆議院選挙と次の参議院選挙を乗り切れば、石破首相は長期政権になる可能性が高まります。過去の経緯から、在任期間と日経平均騰落率には相応の関係があるとみられるため、今後の日経平均を見通す上では、やはり今回の衆議院選挙の結果が特に注目されます。
(※情報提供、記事執筆:三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト 市川雅浩)
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