タイでは、昨年のEV販売台数が7万台を超えるなど、EV市場が拡大。自動車
販売全体に占めるEVの割合が1割に迫っており、近隣諸国に先駆けてEVが普及している。

タイでEVが増加している背景には、政府による普及策がある。政府は、①購入時の補助金供与、②EVの関税・物品税減免、③EV・バッテリー・充電設備等を製造する企業への法人税減免などを実施。これらの政策を受けてEV需要が増加し、なかでも中国からの輸入が急増している。さらに、政府は国内生産の増強も図っており、最近では中国メーカーが相次いでタイに工場を新設している。

今後、タイではEVの生産能力が国内需要を上回る可能性がある。タイの自動車市場は全体として頭打ちとなっており、自動車販売台数は年間80万台程度と伸び悩んでいる。この背景には、タイ経済の低成長やオートローン審査の厳格化などがある。EVの生産能力は、今後年間80万台近くに達するとみられ、その場合、メーカーは販路を海外に求める公算が大きい。

もっとも、EV輸出環境は厳しく、メーカーの思惑通りにならない恐れもある。具体的には、①世界全体でのEV需要の鈍化、②中国メーカーのタイ製EVが西側諸国で輸入制裁対象とされる可能性、③近隣国とのEV輸出競争の激化、などを背景にタイ製EVの海外販売が伸び悩み、将来的にEVの生産調整がタイ経済を下押しするリスクに注意が必要だ。

(※情報提供、記事執筆:日本総合研究所 森田一至)

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