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【矢野ディレクター】
昨年度、県内の高校生の求人倍率4.9倍。
これは、全国平均の3.98倍を大きく超えて、過去最高を記録しました。
今年度はどうかというと、今年度の7月末時点の求人倍率と昨年度の同じ時期を比べてみると、昨年度の4.31倍に対して、今年度は4.65倍と去年、上回る求人倍率になっているんです。

一方で、こちらの数字、37%。
これは高校生の新卒の就職者の3年以内の離職率です。

売り手市場の中で起こる高い離職率。
高校生の就職現場で、今、何が起こっているのか?最前線を取材しました。

<VTR>
今月開催された高校生を対象にした合同就職説明会。
会場には、様々な業種、17の企業がブースを出展しました。
開始の2時間前。
会場に1番乗りしたのは左官業の会社です。

【中野工業所・中野盛治社長】
「もう担い手確保は不可能に近いです。うちは70歳代が大半」

いずれの業界でも今や、人手不足は深刻な問題です。
高校生の就職セミナーの場合、大切なのがイメージ作りなんです。
何故かというと...

【舟入商業高等専門学校・新納優子先生】
「高卒は割と9月くらいの夏休みが終わってからなので遅いので、就職のイメージがつきにくいし、なかなか足が動かない」

【日本ウェルネス高校・広島キャンパス・細田丈博教諭】
「企業のイメージがつきずらいといところもあったり、学校に届く求人票だけだと見えにくいところがあると課題として感じていました」

ここで、ポイントになるのが、「体験型」です。
先ほどの「左官業」の会社は…

【中野工業所・中野盛治社長】
Q:実際に壁を塗って?
「そうです。体験にきてもらった生徒さんに実際(塗ってもらう)。1人でも興味をもってもらって弊社に入ってくれたらうれしいです」

こちらの会社が持ち込んだのは大量の瓦。
何をするのかというと・・。
屋根に瓦を止める屋根職人が行う、釘打ち体験です。

【イベントを企画したジンジブ・岡村大河広島支店長】
「各企業もブースの装飾や体験も今回はすごくしてもらっているので、話を聞くのはもちろん体験ということも学生がしてもらえればと思います」

サービスを提供する業種は、仕事を体験することが、難しいんですが、そこで、思いついたのは・・。

【フレッシュ青果人事部採用課・長祐介さん】
「新しくお好み焼きの2号店を出そうと思っていて看板メニューを考えてるんです。お好み焼きの上にかけるもので何かお勧めみたいなものはない?」
「キュウリ」
「キュウリをどうかけます」
「スライスして、シャキシャキ食感で」
「斬新ですね」

営業マンが現場で直面するセールスの場面を再現して体験してもらいます。
このように就活生の「体験」を重視するのは、会社や仕事の内容を知ってもらいたいという企業サイドの思いの他に、もう一つ、生徒側にも大切な理由があるんです。

【舟入商業高等専門学校・新納優子先生】
「就職したいという生徒と一緒にハローワークの求人票を見るとかそれぐらいで直接(就活に)関わることはほぼないと思う」

【日本ウェルネス高校・広島キャンパス・細田丈博教諭】
「生徒たちが気軽に閲覧ができるという体制を作ることが難しい部分があったり。ある程度こちらでピックアップしたものを生徒たちに見せるという形でやっています」

高校生の就職活動は、夏休みが終わってから始まる期間の短さに加えて、大学生の就活と大きく違って、求人票の段階で絞り込んで行うため、学校にも生徒にも、企業との出会いの機会が少ないというのが、大きな課題だったのです。

【舟入商業高等専門学校・新納優子先生】
「(会社に)見学に行こうといったらそこを次受けましょうとか、そんなに何社も何社も(見学に行くことは)ないので、ほとんど1回決めてその会社を受けたらおしまいという生徒も多い」

そのため、何が起こるかというと・・。

【舟入商業高等専門学校・新納優子先生】
「私の周りの高卒で入った生徒は、3~4年働くと転職しようかなとか辞めようかなと思いますという相談はあります」

厚生労働省が発表したデータによると、2020年の3月に卒業した高校生の離職率は、1年目が15.1%。
その後、毎年、およそ10%離職して、3年間で、37%、およそ、10人に4人が、離職しているんです。

【舟入商業高等専門学校・新納優子先生】
「やっぱり働いてみて思っていたのと違う、こんな仕事だと思わなかったとか・・そういういうことはよくあります」

ミスマッチによる離職率は、企業、生徒の双方に、大きなマイナスです。
近年、盛んになった高校生の就活イベントには、この問題を解決しようという狙いもあります。

【イベントを企画したジンジブ・岡村大河広島支店長】
「今まで企業比較ができなかった、求人票の文字だけでしか会社を見つけることができなかった学生からするとより(企業の)イメージがついて離職をゼロにはできないですが、ゼロに近づけられるようなイメージが入社前にしっかりついた上で入社を決めることは(入社後の)定着率が高くなることにつながっていくと思う」

企業が魅力を伝え、生徒が知ろうとすることが、就職のミスマッチを防ぐことになります。

【舟入商業高等専門学校・新納優子先生】
「こういうイベントが増えてくれればよりよいと思う。学校としてはとてもありがたい。学校ができないことをしてくれるので」

【参加した生徒】
「地域に関われる仕事がいいかなと思う。細かいところまでは分からないのですけど」
「手に職を持ちたいと思います」
Q:こういう仕事もいいですか?
「はい」

人手不足を背景に、今、高校生の就活が、少しずつ変わり始めています。

<スタジオ>
企業と接する機会が多い大卒の就活と比べるずいぶん違いますね。

【コメンテーター:エディオン女子陸上部アドバイザー・木村文子さん】
「イメージも漠然としているでしょうし、こうやって体験することでより具体的になっていくのかなと思います」

広島県は「転出超過」ですから、高校生の就活をきちんとやることは、転出超過を防ぐことにもつながる大きな要素になるのか、今後の取り組みにも注目したい。

以上、マネー研究所でした。

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