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 “世界一うまい魚”と呼ばれる新しい品種が注目されています。幻の魚を親に持つ魚の味とは?

■世界一うまい魚を作る挑戦

富浦漁港 この記事の写真

 水産養殖「さかなドリーム」の石崎勇歩さんが「世界一おいしい魚を作っていく」と目指すのは、これまで地球上に存在しなかった“世界一うまい魚”です。

ハイブリッド魚

 幻の魚を親に持つ新たな品種「ハイブリッド魚」。脂の乗った、きらめくような乳白色の白身に、ミシュランガイド掲載の寿司店は「びっくりしました。こんなにクオリティーが高いとは」と驚嘆しています。

 ハイブリッド魚の12月からの試験販売を目指し、挑戦を続ける養殖の現場に向かいました。

 都心からおよそ100キロ離れた千葉県・富浦漁港の沖合に、波が高く、潮の流れが速い場所に魚の生け簀があります。

石崎さん
「普通、養殖はもっと穏やかな場所でやるんですが、ここはかなり天然の魚が生息している環境に近い」

 生け簀で泳ぐのは、体長15センチほどの稚魚。アジ科の希少魚「カイワリ」と「金アジ」という名で珍重される南房総のマアジを掛け合わせたハイブリッド魚です。

 見た目も親譲り。顔はアジ、胴体はカイワリに似ています。

石崎さん
「カイワリの万人受けする上品な味わいと金アジの脂乗りが強く反映されていて、いろんな人が感動してくれる魚」

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■漁獲量、1984年ピークから3分の1に減少

■漁獲量、1984年ピークから3分の1に減少

漁獲量減少

 カイワリは、おいしさこそ折り紙付きですが、漁獲量が安定せず、市場に出回ることがほとんどありません。しかも、養殖が難しいという難点もあります。

 そこで、養殖のしやすいマアジを掛け合わせることで問題を一挙解決。しかも、味わいは、両者のいいとこ取りを実現しました。

石崎さん
「世界一うまい魚を作るのは、終わりなき旅みたいな。我々は飼える飼えないじゃなくて、最高においしいかおいしくないかを基準に魚を選抜しています」 水産養殖「さかなドリーム」石崎勇歩さん

 大手食品会社出身の石崎さんは、去年7月に東京海洋大学の魚類専門家らと、水産養殖のスタートアップ企業を立ち上げました。

 カイワリのように、うまくても漁獲量が少ない魚を品種改良し、養殖することに活路を開こうとしています。 

 稚魚を育てるのは、地元の岩井富浦漁業協同組合です。養殖を委託し、成長した魚をすべて買い取る契約です。

岩井富浦漁業協同組合 鈴木直一組合長
「今、マアジが少なくなって困っている矢先にこの話が来た。ハイブリッド魚が南房総に来れば、おいしい魚があるよと期待は大きいです」 日本の漁業の現状

 世界に冠たる漁業大国である日本。しかし、その漁獲量は、1984年の1282万トンをピークに、今やおよそ3分の1にまで減少しています。地球温暖化による海水温の上昇が大きな要因です。

仲卸業者の期待

 おいしい養殖魚の登場を、豊洲市場の仲卸も待ち望んでいます。

豊洲市場 仲卸「山治」
山崎康弘社長

「(漁獲量の減少は)限界値まで来ている。本当に養殖を真剣に考えて使わなきゃいけないと感じる。安定的にとれて、かつ養殖臭さがなくて、天然に近い旨味があれば最高じゃないですか、これからは」

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■ミシュランガイド星獲得店の評価は?

■ミシュランガイド星獲得店の評価は?

熟成鮨・万

 この日、石崎さんはハイブリッド魚を持って、東京・渋谷の熟成鮨・万を訪ねました。

石崎さん
「本日は『カイワリ×マアジ』を超一流の寿司職人に試食していただく」

 6年前にオープンし、わずか1年でミシュランガイドの星を獲得して以来、5年連続で星を守っています。

熟成鮨・万 白山洸さん
「6年間、一切養殖の魚を使ったことがないです。どうしても現状の養殖の魚は見劣りがする」 白山洸さんの評価は…

 妥協を許さない魚の目利きで、色艶を見て、香りをかぎます。ハイブリッド魚「カイワリ×マアジ」の評価は…。

白山さん
「養殖魚特有の臭みはないですね」 石崎さん
「本当ですか!」

 血合いの部分も、色鮮やかです。

白山さん
「めちゃくちゃ脂の乗ったシマアジとたいして変わらない。カマのところとか、サシがしっかり入っている」 評価は?

 ツヤツヤと光る乳白色の刺し身。まずは醤油も塩も付けず、そのままの味を見ます。

白山さん
「すごくよくできた魚、雑味は極端に少ない。クリアと言っていい味。ただ余韻ですね、余韻だけすごく気になる」

 鼻に抜ける魚の香り。その余韻が短いという指摘です。

白山さん
「ただ、おいしく食べる方法はすごく分かるんですよ」 握り寿司の評価は?

 店主の白山さんは魚に軽く塩をして、汗をかかせます。さらに醤油で身を引き締めると同時に、甘みも加えました。次は、握り寿司で味を見ます。

白山さん
「軽く塩をしたら、めちゃくちゃうまくなってます。味わいとか香り、全然合格ですよ。(コースの)構成によっては全然出して大丈夫なレベル」 石崎さん
「養殖魚の店での初デビュー、可能性ゼロではないですか?」 白山さん
「ゼロではないどころではないです。このポテンシャルで、もう少し落ち着いた脂が年中続くのであれば、ぶっちゃけ春の終わりから夏にめっちゃほしい」

(「グッド!モーニング」2024年10月16日放送分より)

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