特集はあの瓶のその後です。2024年7月、惜しまれながら瓶牛乳の製造・販売を終えた長野県大町市の松田乳業。このままでは寂しいと思ったのは会社も同じで、地域で長く愛されてきたその空き瓶を活用し、グッズの販売を始めました。


■アイス店に並ぶ牛乳瓶の中身は

安曇野市のアイスクリーム店。

大町市の松田乳業の牛乳を使った濃厚な味わいが人気です。


その店内に並んでいるのは牛乳瓶ですが、中身は牛乳ではありません。

訪れた客:
「レトロでかわいい」
「センスがあるなと」


中身はミニタオル。レトロな男の子のキャラクターのタグがついています。

容器は役目を終えた牛乳瓶。新たな役目が与えられ復活したのです。


■価格高騰で瓶牛乳の販売終了

松田乳業の瓶牛乳は男の子のキャラクター「まつだくん」と「富より健康」のキャッチフレーズで65年に渡って親しまれてきました。

瓶牛乳自体は80年もの歴史がありましたが、2024年7月、ピリオドが打たれることに。


松田乳業・松田邦正社長(2024年7月):
「35円で使っていた瓶が75円になりまして、それが非常に理由として大きい。製造ラインの老朽化ですね、これがもう」

瓶の価格が高騰、製造ラインも限界が近づき、「紙パック」への切り替えを決断したのです。


■「瓶」最終日は牛乳でお清め

7月26日、瓶牛乳製造最終日―

松田乳業・松田愛さん(社長の長女):
「瓶の『まつだくん』が流れてるの見てたら、ジーンときました」


ついにー

退職するスタッフ(69):
「終わりました」

松田乳業・松田邦正社長:
「はいどうも、おつかれさまでした」
「最後に、お神酒の代わりに」

フル稼働してきた機械を牛乳で清める―。


■紙パック化するも大量の空き瓶が

新たに生産が始まった「紙パック牛乳」。パッケージには「まつだくん」が引き継がれ反対側にはガールフレンドの「モモちゃん」も。

夏休み明けから学校給食での提供も始まり、ここまでは順調です。

しかし、松田乳業には課題が残りました。


松田乳業・松田愛さん:
「空き瓶が今、こちらに収納されています」

それは大量に残った空き瓶。

松田愛さん:
「回収してきたものと、使わずに新品のものもあります。およそ2万本くらいあります(笑)」


■「残しておきたい」娘と活用方法探る

廃棄には多額の費用が掛かる上、愛さんたちには捨てられない理由がありました。

松田愛さん:
「(創業)100年超えても人気があるデザインなのはうれしいことなので、残しておきたかった」


瓶牛乳を惜しむ声や「空き瓶がほしい」という要望が相次いだことから活用方法を探ることに。相談相手となったのは長女の鈴木夏琳さん(27)です。

愛さんの長女・鈴木夏琳さん:
「何か生かせないかなってことで、母とずっと1年前くらいから話していて」


夏琳さんは結婚して安曇野市で子育て中。社員ではありませんが、コーヒー牛乳からリニューアルした紙パックの「かふぇおれ」のデザインを担当しました。


1年ほど前からはインスタグラムも。「映える」展開で「まつだくん」人気を支えてきました。

長女・鈴木夏琳さん:
「(そういう仕事をされていた?)いや、してないです。もう趣味で」

松田愛さん:
「昔から絵、好きだったしね」


■空き瓶にタオル入れグッズ化

母と娘で相談し、空き瓶は容器として活用、中身は誰もが使えるタオルにしグッズとして販売することに。

薄くて肌なじみのよい今治タオルは色違いで2種類を用意。

青には「まつだくん」と「富より健康」のキャッチフレーズ、ベージュには「まつだくん」と「モモちゃん」の2人が描かれた「タグ」が映えます。


松田愛さん:
「レトロっていうところで人気を頂いているので、それをどううまく『買いたい』って気持ちにさせるのか」


■タオルにもこだわる

愛さんの長女・鈴木夏琳さん:
「こだわりました。パッと見たときに、『かわいい』って思ってもらえるやつにしなきゃ手に取ってもらえないので、(タグの)裏の牛柄もこだわりました」


夏琳さんもやはり、瓶牛乳には思い入れがありました。

鈴木夏琳さん:
「小さい頃から見慣れていて何とも思わなかったんですけど、年を重ねるにつれてかわいい瓶牛乳をずっと飲んでいたんだなって。社長=おじいちゃんにもずっとお世話になってきたので、恩返しできたらなっていうのは、ずっと心のどこかであったので」


■社長も「あっぱれ!」なグッズに

グッズを目にした祖父・邦正社長はー。

松田乳業・松田邦正社長:
「私の発想ではこういうものは全くなくて、非常にかわいくていいですね」(お孫さんにはなんて伝えたい?)あっぱれ!(笑)」


■牛乳をアイスに使う店でも販売

そしてー。

取引先に販売を提案すると、多くが歓迎してくれました。

こちらのアイスクリーム店では早速、目立つところに。

MDIアイスクリーム・ボイヤー・ケルトンさん:
「かわいいですよね、いい感じですよね」


店は2年前から松田乳業の牛乳を使用。

濃厚なアイス作りには欠かせないと言います。


MDIアイスクリーム・ボイヤー・ケルトンさん:
「牛乳のそのままの味が残っていて、おいしくできるんですよ。その瓶がまだ使える、いいお土産になると思います」

訪れた客:
「瓶が捨てられちゃうのはもったいないから、こうやって再利用されるのはとてもいい」
「若い人にも受けるんじゃないかなという感じがしました」


■日帰り温泉施設では自販機に

一方、こちらは大町市の日帰り温泉施設。


湯上りに飲む「牛乳」は紙パックになっても変わらぬ人気。


空き瓶のグッズも同じ自販機に入れました。

湯けむり屋敷 薬師の湯・大瀧知弥支配人:
「昔から知ってる人たちは寂しい気持ちもあると思うんですけど、新たな商品が出るのはとてもいいことだと思います」


本社にはインスタを見てさっそくファンが。

これまで給食でしかお目にかかれなかった「青文字の瓶」を入手しました。

本社を訪れたファン:
「特に青いやつは学校用なのかな。だから瓶が欲しかったのと、中のハンカチがかわいいなと。たまに瓶に(牛乳)詰めて飲んだりして楽しんでいます(笑)」


■新たなグッズの商品化も検討

今もなお愛される「瓶牛乳」。グッズは、大北地域を中心に販売中で、今後、新たなグッズの商品化も検討したいということです。

空き瓶を商品化・鈴木夏琳さん:
「みんな声をそろえてかわいい瓶だねって言ってくれるので、まだまだ活躍していただきたい瓶だなと。新しい形となって喜んでいただける商品が牛乳とは別に作れたらいいなと思いますね」

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